*

大家のおばちゃんには誰も勝てない

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

日曜日、「野々村荘」の大家のおばちゃん宅で宴会をした。
久しぶりに会うおばちゃんは齢83という高齢で、
足腰は悪く、目も耳も衰えているが、
頭の回転と喋りのキレ、そして独特の感性は全く衰えていないどころか
ますますパワーアップしていた。
「野々村荘」秘話ももちろん披露。
おばちゃんのダンナさんは民放の有名ディレクターだったので、
意外にも有名人がここを出入りしている。
まだ娘っ子だった三田佳子は
なんとこの家で女優デビューが決まったというし、
おばちゃんが着物をきつけてあげたり、
何かと面倒を看たという凄い話を以前、聞いたことがある。
今回は「肝っ玉母さん」の京塚昌子がおばちゃんに都電の線路の上で土下座したという、
これまた信じがたい話を聞いてしまった。
もっともおばちゃんが土下座させたわけではなく、
京塚昌子が勝手に土下座しただけらしいが。
しかし、もっとすごいのはおばちゃんがそういう有名人について、
何も特別な感情をもっていないこと。
「そういえば、こんなことがあったわね…」という程度なのだ。
それより、おばちゃんにはロクデナシ揃いのアパートの住人がよほど大事みたいだ。
ケンゾウさんや守銭奴、ケガワ君、それに私や探検部のバカたちのほうが
三田佳子や京塚昌子より優先順位として上なのだ。
そして今も、理解不能な行動を次から次へと起こす住人たちの面倒を一生懸命みている。
類い稀な母性本能としか説明できない。
そのほか、数々の爆笑のエピソードを聞いたが、
それはまたいつか。

関連記事

ドンガラさん、15年ぶりの緊急来日

私がかつて翻訳したコンゴ文学の名作『世界が生まれた朝に』(小学館、絶版)。 その著者であるエマ

記事を読む

no image

銀河ヒッチハイク・ガイド

 「しばらく新刊を断ち、家にある未読の本を読もう」という“新刊ラマダン”をやっていたが、実はユーフ

記事を読む

no image

元キャバ嬢&風俗嬢にはかなわなかった

「SPA!」の掲載誌が届いた。 「イスラム飲酒紀行」はかなりトンチキな企画で(文芸誌ではできない)、

記事を読む

no image

モンスタークエスト

今週はいろいろと忙しい。 月曜日は、ワセダで、アメリカの衛星放送局ヒストリーチャンネルの「モンスター

記事を読む

no image

休みをとって職場へ?

金曜日はジュンク堂書店新宿店にて、宮田珠己部長とトークイベント。 (司会は杉江さん) 例によって宮

記事を読む

no image

アジアの匂い

2泊3日で、熊本と鹿児島の高校に講演に行ってきた。 今年が3回目。これまで群馬、新潟、香川、愛媛に行

記事を読む

no image

『誰も国境を知らない』

西牟田靖『誰も国境を知らない』(情報センター出版局)の書評を 「北海道新聞」に書く。 新聞の書評は

記事を読む

no image

ラジカル佐藤英一先輩逝く

昨日は大阪に行ってきた。 早大探検部で私より2つ上の先輩が心筋梗塞で急逝し、その告別式があったのだ

記事を読む

日本の中世人と現代ソマリ人の共通点と相違点

『謎の独立国家ソマリランド』の感想を述べたツイートに、清水克行『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ

記事を読む

no image

釣りに失敗する

本の雑誌の杉江さんに新宿で会ったので、昨日思いついたばかりの「儲け話」をもちかけてみた。 すると、彼

記事を読む

Comment

  1. だすてぃ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1)
    いつも楽しみに拝見してます(もちろん本も文庫のみ全部読みました)。
    「長塚京子」さんとは?
    「肝っ玉・・・」なら、ひょっとすると「京塚昌子」さんでは?
    揚げ足取りですみません。

  2. タカノ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    あ、そうそう、「長塚京子」じゃなくて「京塚昌子」です。
    今、直しました。
    なんか変な気がするって思ってたんですよ(笑)。

  3. fjsm より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727)
    野々村荘話はいいですよね〜
    もっともっとお聞きしたいです!

  4. komari-ko より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0)
    おばちゃん、いつもかっこいいですね〜!
    私もいつかそんな83歳になりたいです。
    高野さん、おばちゃんの伝記を書いて下さい!

  5. 歌川 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    以前どなたか書いたかもしれませんが、映像化したら嬉しいですね。
    おばちゃんは樹木希林、ケンゾウさんは宇梶剛士、守銭奴は笹野高史(私には笹野さんは太っ腹に見えますが)
    おばちゃんはもたいまさこも素敵。
    うーんやっぱりおばちゃん本人が出演!?
    高野さん役は瑛太。先日トップランナーで、人柄がにじみ出ていたので。
    (若手俳優に疎くなってきて年波を感じる今日このごろ)
    なーんてファンは妄想します。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年10月
    « 3月    
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑