孤高の学者とゼミ合宿
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
名著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)の著者、小島剛一先生とお会いした。
先生はフランスとドイツ国境のアルザス地方に40年住んでおり、
今回は珍しく日本に戻ってきたのだ。
実は二週間前に初めてお会いし、あまりの凄さに驚嘆した。
今回は、辺境を仕事にしている友人二人を交えて泊りがけで話をうかがった。
ほとんどゼミ合宿である。
孤高の天才教授とバカ学生3名という趣だ。
現在63歳の小島先生はトルコを30年以上歩き、少数民族の調査を行った。
トルコ当局よりもどんな研究機関よりもトルコに詳しい。
それだけではない。
言語の天才で数え切れないほどの言葉を話す。
今回確認できただけでも、
フランス語、トルコ語、ドイツ語(これらは日本語と同じレベルで読み書きまでできる)、英語、スペイン語、ロシア語、ハンガリー語、スウェーデン語、ギリシア語、ルーマニア語、ポーランド語、セルビア=クロアチア語、
アラビア語のイラク、エジプト、シリア、スーダン方言など(モロッコ方言だけは話したことがないとのこと)、アルメニア語、ペルシア語、スワヒリ語、ウルドゥー語…
ここまでで先生がこの話題に飽き、他の話題に移ってしまったので、
全貌は明らかになっていない。
このほか、会話から察するに中国語、タイ語、マレーインドネシア語、ベトナム語、
韓国語、ネパール語も話せるらしい。
あ、そうそう、トルコの少数民族の言語も50〜60ほど話せるみたいだ。
ちなみに先生の「話せる」という基準は、最低でもネイティヴとふつうに会話して冗談が言えるレベルとのことだ。
しかし、この超絶した言語能力も序の口に思えるほど、
他の学識、体験、体力、精神力、芸術センスも抜きん出ている。
そしてひたすら孤高。
見た目も、話していても、なにじんかわからない。
ヨーロッパ人なのかアジア人なのかも定かでない。
聞けば聞くほど謎めいた超人である。
現在トルコのもう一つの顔の続編を執筆中(私が編集者を紹介した)で、
もう半分くらい進んだという。
それも楽しみだが、今後もっともっとたくさんの本を書いてほしいと思わずにはいられない。
関連記事
-
-
究極の野菜はフグ野菜
今年も年初から忙しくなかなか読書の時間がとれないけれど、 読んだ本は当たりが多く、充実している。
-
-
アスクル人、カンヌを制す!?
『アスクル』に登場している沖縄の映画プロデューサーの井手君が上京、またうちに泊まっている。 毎晩、真
-
-
ダウン症ドラマーのドキュメンタリー映画「タケオ」
飯田基晴『犬と猫と人間と』『あしがらさん』、土屋トカチ『フツーの仕事がしたい』と、 観た映画がすべて
-
-
吾妻ひでおがもたらした超有用情報
吾妻ひでおの『疾走日記2 アル中病棟』(イースト・プレス)を読んだ。こんな細かい漫画を8年も書き続け
-
-
後輩・角幡唯介が開高健ノンフィクション賞を受賞!
猛暑がつづく中、また難民シェルターに行き、コソヴォ出身のアルバニア人に話を聞く。 おみやげに井浦伊
-
-
2010年ノンフィクション・マイベストテン
続いてノンフィクション。 1位〜3位 木村元彦『悪者見参』『誇り』『オシムの言葉』(集英社文庫)
-
-
25年ぶりに天龍源一郎を見た
なぜか一足早く忘年会シーズンになり、 連日飲んでいる。 日曜日は先日本屋野宿を行った伊野尾書店の伊野
-
-
生きている、というのは健康によくない
ツイッターで繰り返しぼやいているように、アフリカから帰国してからというもの、 仕事や雑務が山積してい
- PREV :
- 内澤旬子と三匹の豚
- NEXT :
- トルクメニスタン特集


