*

四万十の至福

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


将来の極秘プロジェクトについて相談するため、
先週末から四日ほど高知・四万十市(中村)に行き、
現地に住む山田先輩(農大探検部OB)を訪ねた。
相談の内容は極秘なのでここでは明かせないが、
四万十川のほとりでひばりやウグイスのさえずりを聞きながら
缶ビールを飲みつつ、宮田珠己の処女作『旅の理不尽』(ちくま文庫)に笑い転げるという
超・至福のひとときを味わったことを報告しておきたい。
宮田さんはこの前電話で「あの本はほんとにふざけすぎてて、恥ずかしくて、
ちくまから再文庫化の話が来たとき、本気で断ろうかどうしようか迷った」と話していた。
その言葉通り、今読んでも、あまりにふざけすぎていて、アナーキーで
笑いながらも驚いてしまう。
特に「旅とは何か」で始まり、「幸運の鍵[ヘルメット]」で終わる「はじめに」は
衝撃以外の何ものでもない。
宮田さんには気の毒なことだが、彼が今後どんなすごい本を書いても、
この「ふざけすぎで恥ずかしい」本が彼の代表作からはずれることはないだろう。
四万十から帰りは、土讃線で大歩危(おおぼけ)の異国めいた渓谷や
漁船が長い航跡をひく瀬戸内の海を眺めながら、
缶ビールを飲みつつ、町田康『浄土』(講談社文庫)を読むという
続・超・至福のひとときを味わった。
そして、驚くなかれ、『浄土』はアナーキーな文体とふざけた発想が
『旅の理不尽』そっくりなのだった。

関連記事

no image

甲子園が割れた日

中村計『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』(新潮文庫)を読む。 松井のこの出来事のとき、

記事を読む

no image

「アヘン王国」復活?!

知人から「アヘン王国」関係の情報を教えてもらった。 「黄金の三角地帯」でアヘン生産が激増しているとい

記事を読む

『バウルを探して』が新田次郎文学賞を受賞!!

川内有緒『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)が 第33回新田次郎文学賞を受

記事を読む

no image

「メモリークエスト」再開

銀座のマガジンハウスに行き、「an an」と「TARZAN」のインタビューを受ける。 両方ともマラ

記事を読む

no image

ボロボロのデビルマンみたいなやつ

月曜日、ヒストリーチャンネルの取材が終わったあと、 探検部の現役学生3名と飯を食う。 うち二人はニュ

記事を読む

no image

高島先生の新刊

連合出版より高島俊男先生の新著『お言葉ですが… 別巻2』が届いた。 最近出版社や編集者からいろんな

記事を読む

no image

今までいちばんビビッたのは…?

上智対談講義第3回目はミャンマーで辺境専門旅行会社を経営する金澤聖太師範。 (極真空手の猛者なので私

記事を読む

no image

小さいおうち

中島京子の直木賞受賞作『小さいおうち』(文藝春秋)を読む。 まあ、書き出しから文章がすばらしい。

記事を読む

no image

ニュー蔵前本

次回の「辺境読書」では、蔵前仁一『わけいっても、わけいっても、インド』(旅行人)を 紹介することに

記事を読む

no image

インドの怪魚ウモッカを探せ!

自分のなかではずっと前から決定していすぎてブログに書くのを忘れていた。 今年の12月中旬から来年の

記事を読む

Comment

  1. LP より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/532.5 (KHTML, like Gecko) Chrome/4.1.249.1064 Safari/532.5
    それでは宮田先生の恥ずかしい所、チラリと見させて頂きます。

  2. Hairmakee kunii より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (iPhone; U; CPU iPhone OS 3_1_3 like Mac OS X; ja-jp) AppleWebKit/528.18 (KHTML, like Gecko) Version/4.0 Mobile/7E18 Safari/528.16
    いつもお世話になっております〜☆
    面白いです〜☆
    YouTube のムベンベ拝見しました!
    死んだゴリラを初めて見ました…
    超 衝撃 !!w
    お邪魔しました〜☆

  3. 行雲 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.0; Trident/4.0; YTB720; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729)
    スットコランド日記は今でもちょいちょいチェックして
    蘇る日を待ってるのだけれど
    旅の理不尽の復刊? しかもこの表紙!
    旅行人は休刊するっていうし
    この本には がんばってほしい

  4. ほうきだこ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30618)
    高野さんが、町田康を読むということが、なんだかとても意外でした。へえ〜・・・旅先をぶらぶらしていて道が意外なところで別の通りに繋がっていたような気分です。

ほうきだこ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年4月
    « 3月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑