*

わが読書人生史上、最高に驚いた出来事

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


宮田部長の『スットコランド日記 深煎り』(本の雑誌社)を読んでいた。
例によって、四国のお遍路だとか、ジェットコースターだとか、時代の気分だとか、
妙なところにいろんなこだわりを発揮し、どこまでがギャグでどこまでがマジな意見なのかもわからない、
不可思議な日記というか、これ、そもそも日記なのかという本である。
とりわけ口やかましいのは昨今の時代劇に対する苦言で、
やれ殺陣が下手だ、一話完結はよくない、連続ものにしろ、SF的な敵を出せ、耽美的にせよ、などなど、「また始まったよ」と私は半分笑い、半分呆れていた。
で、彼の結論は「仮面の忍者 赤影の復活を希望する」となっており、
そういえば、前に会ったときもそんなことを力説してたよなー、どうして赤影がそんなに好きなんだろう、アホだねーと苦笑したが、次の一文で目が点になった。
「そういえば、こないだ高野さんに金目教篇のDVDを貸したが、もう観ただろうか。呆れて途中で投げ出しているような気がしなくもない」
あーっ!と思わず叫んでしまった。
そういえば、前に宮田部長から何かDVDのようなものを渡された気がする。
そしてそこには「赤影 金目教篇」と書いてあったような気もする。
宮田部長が本でもDVDでも実際にブツを渡して勧めたことなどこれ以外になく、
「面白いから是非見てください」といつになく真剣な顔で言っていたような
気もする…。
それなのに。
途中で投げ出すどころか、プレーヤーに入れたことすらなく、
だいたいどこに行ってしまったのか。
一度も家で見かけたことがない。
やばい!!
いや、本を読んでいてこんなに驚いたことは初めてだ。
もはやスットコを読んでいる場合ではない。
慌ててDVD棚を探すが赤影なんてない。
あちこち探し回るがどこにもない。
まちがえて燃えないゴミに出してしまったのだろうか。
汗だくになって、絶対ありそうもないような場所まで探したら、
なんと、プロレスのVHSビデオの間にはさまっていた。
どうしてそんなところにもぐりこんでいるんだ。
DVDからして謎の忍者だ。
というわけで、見ましたよ。赤影。第一話だけだけど。
なんだろう、このシュールさは。
敵の忍者が怪獣を呼びよせ、火炎放射で五重塔を破壊させたりしている。
あー、これだったのか。宮田部長が前から書きたい、書きたいと言っていた
チラノザウルスと侍が戦うようなチャンバラ小説って。
「だから赤影を見ろって言ってたやんか!!」
という部長の絶叫が聞こえたような気がした。

関連記事

no image

ソマリランド療法の勧め

なんとか取材の目処がつき、来週の8日(金)に東京に着く便を予約した。 ソマリ人は、私にとって、おそら

記事を読む

no image

読んではいけない

仕事をしなければいけないのに イエス小池『漫画家アシスタント物語』(マガジン・マガジン) なんて奇

記事を読む

アラスカへ逃げたい

石塚元太良・井出幸亮著『All About Alaska アラスカへ行きたい』(新潮社)

記事を読む

no image

災害対策マニュアル(1)「ヘッドライト」

高野秀行の災害対策マニュアル(1)「ヘッドライト」  昨年、新潟中越地震が起きたあと、私はいつになく

記事を読む

no image

霊能者、超能力者におねがい

先日、図書館教育ニュースという、学校図書館の壁に貼り出す写真新聞の取材を受けたのだが、 なにせカラー

記事を読む

no image

なぜか東金経由アフリカ行き

言い忘れていたが、出発は二日遅れて、今日になっていた。 ところが突然、千葉の東金に現地の事情をよく知

記事を読む

no image

なぜか、まだ日本にいる…

なぜか、まだ日本にいる。 ミャンマー取材の許可がまだ取れず、出発が伸び伸びになっているのだ。 本来な

記事を読む

no image

皇太子にアシストしたらベンツ

サッカーは特に好きでもないのに、サッカー本は好きだ。 とくに非西欧のサッカー事情はひじょうに食欲を

記事を読む

高野本の未知なる領域

ここ最近最も驚くべき、かつ(それが本当なら)実に嬉しいことがあった。 大竹まことのゴールデンラ

記事を読む

no image

目的は果たせたのか

調布の東京外大から江戸川の葛西臨海公園まで、 アブディンとタンデム(トライデム)で出かけた。 目的

記事を読む

Comment

  1. より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N03B(c500;TB;W24H16)
    はじめまして。
    ノと申します。
    大学生です。
    恐れ多いですが、念願のコメントさせていただきます。
    スットコランド、北欧のお洒落な本だと思っていました。なにはともあれ、その本に高野さんのお名前が載っているならば是非買わねば…。
    新刊、楽しみにしています。
    かしこ。

  2. より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_4_11; ja-jp) AppleWebKit/533.17.8 (KHTML, like Gecko) Version/4.1.1 Safari/533.17.8
    初めまして。秀と申します。恐らくは高野先生と同年輩の
    同性です。小学生の頃、仮面の忍者赤影の再放送に夢中になり申した。
    その後は、間違った人生を着実に歩んでいます。
    でも、コンゴにモケーレムベンベがいるならば、日本のどこかに千年生きて巨大化したガマガエルが存在する事を100%否定する事はできませんね。先生の著作を読むと力づけられます。勇気が出ます。
    これからも頑張ってください。

  3. くのいち より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10_5_6; ja-jp) AppleWebKit/525.27.1 (KHTML, like Gecko) Version/3.2.1 Safari/525.27.1
    DVD見つかってよかったですね。
    ちょうど今、スットコのそのあたり読んでたので、
    一粒で二度おいしい気分でした。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

  • 2025年2月
    « 3月    
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    2425262728  
PAGE TOP ↑