*

フリーランスの志士

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


家に攘夷モノがないか探してみたら、藤沢周平『回天の門』(文春文庫)に気づいた。
千葉道場きっての剣客で、新撰組成立のきっかけとなった浪士組の発案者でもある清河八郎を描いたものだ。
大昔に読んだが、面白いという印象はない。
ていうか、最後まで読んだかも疑問である。読んでないのかもしれない。
なので、読み直してみたのだが、やはり藤沢周平の一般の時代小説とちがう。
ドラマ作りをしないので、吉村昭の小説によく似た感じで淡々と進む。
結局この本でも清河八郎自身の実感としての「攘夷」はよくわからなかったが、
幕府が崩壊していく過程はひじょうによく理解できた。
清河八郎という人が、どこにも所属しないフリーランスだったから、
幕府とも薩摩、長州などとも距離をとって見れるという利点があるのだ。
そして、「所詮フリーの人間なんか信用できない」という世間の冷たい目は
古今東西を問わず変わらないのだとしみじみ実感した。
清河八郎の人生が痛快なのも悲劇なのも、すべて「フリー」であることから来ている。
     ☆        ☆         ☆
横須賀芸術劇場で、キンシャサのバンド、「スタッフ・ベンダ・ビリリ」のライブを見に行く。
主催会社のスタッフに、「ムベンベ」を愛読してくれている方がいて、
ご招待していただいたのだ。
予想通り、ベンダ・ビリリはよくて、観客は大熱狂。
私も久しぶりに踊りまくってしまった。
映画かライブか、どちらかは是非見に行ってほしい。

関連記事

no image

日本はフライ級ミステリの宝庫?

独裁政権下の小説を読みつづけている。 最近はオレン・スタインハウアー『極限捜査』(文春文庫)を読ん

記事を読む

no image

ゴール目前で足がつったマラソンランナー

2月刊行の『謎の独立国家ソマリランド』が佳境だ。 すでに地図、相関図、ソマリ群雄割拠之図、口絵のカ

記事を読む

no image

板みたいなもん…

実家の親に頼まれ、新しいパソコンのセットアップに行ったのだが、 niftyのありえないようなシステ

記事を読む

no image

「幻獣ムベンベ 早稲田大学探検部コンゴ行」

7月12日発売のヤングチャンピオン誌で、いよいよマンガ版「ムベンベ」が始まる。 正式なタイトルは「

記事を読む

no image

プロデュース業はじめました

明大前にて、年下の友人Wと打合せ。 いつもと立場はちがい、今度は私が編集者役。 書くのは向こうだ。

記事を読む

no image

8年ぶりにアフリカ大陸

 セイシェルの取材を終え、次は旧ユーゴスラビアのセルビアに行くはずが、 急に気が変わって南アフリカ

記事を読む

no image

猫又とペシャクパラング

TBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」という番組に出演。 アフガニスタンのペシャクパラングについて話

記事を読む

no image

京極堂に会う

平山夢明さんと京極夏彦さんがホストを務めるFM東京のラジオで、『困ってるひと』の大野更紗さんがときど

記事を読む

no image

危険の意味

『アフリカにょろり旅』(講談社文庫)の著者、青山潤氏(東大特命準教授)と対談。 一年のうち3,4ヶ月

記事を読む

no image

今度はインド人をアゼンとさせてしまう

また午前中、また別のソマリランド人と会った後、 いつもどおり、ドトールF店に「出勤」すると、なぜかそ

記事を読む

Comment

  1. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    清河八郎は「マッチポンプ」を地で行く人だったのでは…浪士を京都に上らせたのも、新撰組を創らせたのも彼の策って、一時は時代を転がしていたんですねぇ、でもコントロールはできなかった訳で…

  2. 昼寝カワウソ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.1; ja; rv:1.9.2.10) Gecko/20100914 Firefox/3.6.10
    何気なくテレビつけたら,NHK9時のニュースで「ベンダ・ビリリ」を
    結構大きく取り上げていました。
    踊る横須賀の観客の中に高野さんがいないか,思わず探してしまいました。
    映画,見たいです。

コシチェイ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年11月
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
PAGE TOP ↑