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楽譜集の自費出版を考えている人のための、著作権処理と編集業務について

公開日: : 最終更新日:2015/04/25 今日のお仕事, 編集のお話 , , , , ,

2年ほど前に『尺八ポップス樂曲集ハ調ベース85選』という楽譜本の著作権処理をした際、「10月のお仕事〜自費出版尺八楽譜集の著作権処理」というエントリを書きました。

ありがたいことに、この記事を読んで、問い合わせをくださった方がおられ、今度は、マンドリンの楽譜集の自費出版をお手伝いすることになりました。

 

IMG_9507

「楽しいみんなのマンドリン合奏曲集」(小林克弘編曲)

マンドリンとギターの専門店、イケガクさんで購入できます。

 

楽譜集を作る場合、出版社のものでも、自費出版でも、基本的な作業のフローは同じです。

大まかには次のようなステップをたどります。

【自費出版で楽譜集を作る場合のステップ】

① 本のサイズやページ数、収載内容を考える

② 選曲する

③ 著作権の確認をする

④ 原稿を作る

⑤ 浄書&本のデザインをする

⑥ 編集・校正をする

⑦ 修正・チェックする

⑧ ④〜⑦の間に楽曲の使用許諾申請をする

⑨ 印刷所へ入稿する

⑩ 完成

③と⑧以外は、別のジャンルの本でも大抵同じ流れです。ただし、自費出版や、楽譜集には、それぞれ他とは異なるポイントがあります。

 

● 自費出版ならではのポイント

発行者の“予算”と“想い”で本の内容は自由自在

出版社で本を作る場合は、自社や他社のベストセラー、売り場などを参考に、本のサイズや価格、ページ数、装丁、主な購買者層などをある程度絞って制作に入ります。発行部数は営業部門の判断にも委ねられるため、部数の大小によって本の制作費や利益なども変わってきます。

特殊な事情でもない限り、「全部売れても赤字!」という企画は通りません。ところが、自費出版の場合、企画も制作費もすべて自分の負担ですから、「どこまで費用をかけられるか」「どんな本にしたいのか」は自分次第。もちろん、「この本を売って儲ける!」という利益重視であれば、出版社の方向性と近くなりますが、「自分の作品の集大成として」とか「たくさんは売れなくても、必ずニーズはあるはず」とか「制作費が回収できればいい」といった、それぞれの事情で、かけられる予算や本の内容はガラッと変わります。

特に、

・本のサイズ

・ページ数

・本文がカラーかモノクロか

・発行部数

という4つの要素は、印刷費含め、全体の制作費に大きく影響してくるので、まずは、ご自分が作りたい楽譜集がどんなものなのか、しっかり決めてから作業にかかった方がよいと思います。

 

●楽譜集ならではのポイント

世の中に流れている曲を使う場合は、著作権の許諾申請が必要

自分で作曲したオリジナルの楽曲集を作る場合は不要ですが、日本の曲、外国の曲問わず、世の中に流れている楽曲を楽譜集に収載する場合は、曲を作った人や、曲の著作権を管理している団体など、いわゆる権利者に使用の許諾をもらう必要があります。

これらの許諾を一括で引き受けているのが、日本音楽著作権協会。いわゆるJASRACです。

JASRACの存在については、いろんな人が、いろんな意見を言っているので、それはそちらに譲るとして、楽譜制作の実務から見れば、JASRACはなかなかありがたい存在です。なぜなら、1曲ずつ権利者に連絡し、使用許諾をとりつけ、それぞれに使用料を払うという作業は、大変な労力ですし、収載する曲数や作詞、作曲者数が増えれば増えるほど、考えただけでも気の遠くなる作業になります。

かつての職場で「フォーク・ロック1001」という、文字どおり1001曲以上集めた楽曲集の編集を担当したことがありますが、これの使用許諾を個別にとらなければならなかったとしたら・・・・。(゜o゜;;

さて、大抵の楽曲はJASRACが管理していますが、中にはJASRAC以外の管理団体に委託している場合や、そもそも楽曲の著者、権利者がどこにも管理を委託していないケースもあります。特に、ゲーム音楽などはJASRAC経由では使用できないものがたくさんあります(例えば「スーパーマリオブラザーズ」(作曲:近藤浩治)や「ファイナルファンタジー」(作曲:植松伸夫)などが有名ですね)。

そういった楽曲は、楽曲の使用を自分たちでコントロールするためにあえて管理を委託していない場合が多いので、許諾申請が降りなかったり、使用料が高額だったりすることもあります。

「どうしてもその曲でないとだめ!」という企画でなければ、それらの楽曲を外すという判断も必要かもしれません。本のデザインができあがってしまってから、許諾申請をしたらダメだった……というのはシャレになりませんよね。

「③ 著作権の確認をする」が選曲の次のステップにあるのは、そのためです。

 

【著作権の確認をするには・・・】

著作権の確認をするには、JASRACのWEBサイトにある「J-WID作品データベース検索サービス」使うのがオススメです。

http://www2.jasrac.or.jp

JASARCのデータベースで楽曲をチェックする際、見るポイントは2つです。

① JASRACが管理している楽曲かどうか

② 管理している場合、国内曲か外国曲か

①で、JASRACが管理しておらず、なおかつ、他の著作権管理団体でも管理されていない場合は、権利者に直接連絡するか、掲載をあきらめるかのいずれかになります。

②の場合は、日本国内で管理登録されている曲であれば、JASRACの申請用紙にもろもろ書いてFAXにて申請、もしくは事前に登録してインターネットで申し込めばOK。一方、外国曲だった場合は、その曲を日本国内で管理しているサブパブリッシャー(サブ出版)に許諾を申請、受理された上で、JASRACに申請します。

 

●洋楽のサブ出版の確認方法

JASRACのデータベースで楽曲情報を調べてみると、表にずらずら〜と情報が書き込まれています。

一応、凡例がついていますが、正直、あまり親切な表示とはいえません。

例えば、これは、JASRACの作品データベース検索で、ロックレジェンド、エルヴィス・プレスリーの名曲「監獄ロック(JAILHOUSE ROCK)」のデータを表示したものです。

JAILHOUSE_ROCK

 

No.1から7まで、いろんな権利者がいて、識別、信託状況によって、その人がどの権利に絡んでいるのかわかるようになっています。表の右側には、演奏、録音、出版、貸与、ビデオ……と、音楽著作権の細かい権利ごとの詳細が表示されていますが、よく見ると、映画とCMの部分に「×」がついているので、何かダメな雰囲気ですね。

xmark

この×は、その権利が、JASRACの管理下にないことを表しています。また、その下にはそれぞれがついており、凡例を見てみると「当該支分権・利用形態については、JASRACに管理を委託していない権利者です。ただし、複合権(放送・配信・通カラ)については、一部の支分権の管理をしている場合があります。」との説明書きがあります。

#の行を左にたどると「日音Synch事業部」とありますので、どうやら、この曲の映画とCMの権利はJASRAC以外の管理団体が管理していて、日本側の管理は「日音Synch事業部」が関係していることがうかがえます。

 

 

では、楽譜集で該当する出版権は、どこを見ればよいのでしょうか。

出版の列をタテに見ると、別段チェックも入っていないので、左側の権利者すべてが権利に関係していそうです。

subpub

No.1と2の作詞作曲者(JERRY LEIBER、MIKE STOLLER)は、出版社に曲の管理を委託しているので、日本語の訳詞を使わないのであれば、3、4、5の権利者だけを見ればよさそうです。外国では3つの会社が管理をしていますが、日本側のサブ出版はいずれも、日音Synch事業部になっています。

ということは、日音Synch事業部に許諾申請をすればいいということになりますね。

もし、3つとも別々のサブ出版がついている場合は、それぞれ許諾申請をすることになります。

サブ出版への申請方法は、いずれもFAXになりますが、申請用紙が独自の仕様になっている会社もあるので、WEBサイトや電話で確認してから申請すればよいでしょう。

ちなみに、曲によっては、PD(パブリック・ドメイン)となっていて、著作権使用料のかからないものもあります。また、サブ出版が設定されていない曲は、外国の管理出版社へ直接許諾申請する必要があり、こちらは言葉や、使用料の支払通貨の問題など、だいぶハードルが高めです(汗)。

 

 

音楽を愛好されている人達にとって、楽曲のアレンジや、楽譜の浄書などはなじみがあっても、著作権の許諾処理や本の制作となると、少しハードルが高いかもしれません。

マンドリン曲集を依頼されたクライアント様も、ご自分で選曲、浄書の手配を進めておられましたが、著作権の許諾申請処理の段で悩まれ、ご連絡いただきました。

すでに、浄書もすんでおりましたので、私のほうでは、著作権の確認をした上での選曲アドバイス、許諾申請のほか、台割の作成、浄書データのInDesign貼付、タイトル周り作成、表紙デザインなど、通常の出版物の作業を中心に、最終的な印刷の手配までお手伝いさせていただきました。

「楽しいみんなのマンドリン合奏曲集」(小林克弘編曲)

 

楽譜集の自費出版を考えておられる方は、上の「お問い合わせ」ページから、お気軽にご相談ください。

 

 

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Comment

  1. 大部 真美 より:

    初めてメールします。
    音楽教室を経営していて、その生徒むけの
    教材用楽譜・老人向け 楽譜
    の自費出版を考えています。
    ご相談等 できれば嬉しいです。
    府中におうかがいも可能です。
    どのように、申し込みをしたらよろしいでしょうか?
    09015041373 携帯
    お手数おかけしますが、よろしくお願いいたしますm(._.)m

  2. 小林渡 より:

    大部様、先日はありがとうございました。
    いいものができるよう、お手伝いさせていただければ幸いです!

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