*

SFの「次」

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


 本の雑誌社の杉江さんに会い、「SF本の雑誌」の「見本」をもらう。
なぜ「見本」なのかというと、先週発売したものが瞬く間に売切れてしまったのだという。
 今の出版界、売れているのはハルキ本だけかと思ったら、意外なものが売れていたわけだ。
 もっともこれは前に私が杉江さんに「SFとか本格ミステリとか、ジャンルを丸ごと素人にもファンにもわかる形で特集を組むべし!」というアイデアを出したのを、
もっと大胆に「別冊」という形で展開したものらしい。
 ほら、私の予想はあたった。
 私自身、SFは門外漢で、SFを読んでみたいのだけど、何を読んでいいのかわからないまま、現在に至っているからそう言ったのだ。
…と、ここまでは半分自慢話のようなのだが、続きがある。
 実際のところ、私も昔はSFが好きだった。
小学生のころ、図書館へ毎日通って少年向けのSFシリーズにどっぷりハマッた覚えがあるのだが、作品名も作家名もストーリーも何一つ憶えていない。(当時から記憶力は抜群にわるかった)
 ところが最近、宮田珠己の「スットコランド日記」をソマリランドで読んでいて、
こんな文章を発見した。
「私が小学校3、4年のときにハマって、むさぼるように読んだ、岩崎書店のこどもSFシリーズがほぼ全巻揃っているではないか!
 相当古くてボロボロに痛んでいたが、挿絵を見る限り、まさにこれは私が読んだのと同じもの。私はこのシリーズで読書の喜びに目覚めたと言っても過言ではないのだ」
 ん?  もしかして、それは私が夢中になったシリーズと同じなのでは?
 それを今さっき思い出し、ネットで検索してみたら、ビンゴ!
 これだよ、これ!
 私30年以上前に熱中したやつは。
 「第四惑星の反乱」とか「生きている首」とか、あー、あった、あった!と一人で大騒ぎしてしまった。
 これを30冊全巻読破し、「さあ、次にいくぞ」と思っていたのに、
「次」が何かわからず、いつの間にかSFから離脱してしまった。
 離脱してミステリに移行した。ミステリには「世界の名探偵」だか「名探偵の世界」だかいう、ジャンルをまとめた「図鑑」みたいな本があった。そこに掲載された作家名や書名を頼りに読み進めていったのだ。
 悲しいかな、SFにはそういうものがなかった。
 あれから30年。やっと「次」が見つかったような気がする。

関連記事

no image

戦時中に建てられた家

友人が大井町線千束に新居を構えたので、 他の友達連中と一緒に遊びに行く。 友人はマレーシア人女性と結

記事を読む

no image

異常ラジオ「東京ガベージコレクション」出演

平山夢明兄いがパーソナリティを務めるTOKYO FM「東京ガベージコレクション」というラジオ番組

記事を読む

no image

淋しい…

ここ数日で、今まで抱えていたものが突然、全部おわってしまった。 NHK「ビルマロード」の編集終了(放

記事を読む

黒豆納豆のアボガド・サラダ

今日届いた納豆セットのうち、たった一つだけ入っていた黒豆納豆「光黒」を使ってさっそく料理。

記事を読む

no image

チャリ仲間が芸術祭大賞をプロデュース

私の友人で、昨年九州を一緒に自転車で走ったワンマン社長(社員が自分ひとりしかいないという意味だが)

記事を読む

no image

Mじゃない

みんな勘違いするのだが、間寛平など日本人が毎年出場しているウルトラマラソンと私の出たマラソンは別物だ

記事を読む

no image

熊の爪跡

「台風の爪跡」とか「戦争の爪跡」とか、 よく「爪跡」という言葉を目にするが、じゃあ、実際の爪跡はど

記事を読む

no image

美しき日韓問題

講談社ノンフィクション賞を受賞した安田浩一『ネットと愛国』(講談社)を読んだ。 丁寧に取材した

記事を読む

no image

多忙につき山歩き

依然として超多忙なので、 平日に探検部時代の後輩2人と「秘境ツアー」にいく。 三人とも当然、フリーか

記事を読む

no image

だからアメリカは嫌なんだ!

今、バンコクであります。 今回、フライトがノースウェスト航空。9.11以来アメリカの飛行機に乗るのは

記事を読む

Comment

  1. KJM より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    SFのカヴァイラストって独特でワクワクしますね。
    私は椎名誠SFシリーズの懐古的な話が大好きです。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年11月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  
PAGE TOP ↑