*

レベル7の衝撃をふたたび

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

高野秀行プロデュースの大野更紗「困ってるひと」がついに最終回を迎えた。
このウェブ連載の反響は驚くばかりで、これまで百通近いファンメールが届いている。
今時ファンレターやファンメールなど、ベストセラー作家でも年に20か30通程度と聞くから、数だけでもすごいし、内容も熱狂的だ。
そのほとんどが「早く書籍化をしてください」と訴えているのも興味深い。
ファンメールを送る人はみんな最後までウェブで読んでしまうはずなのに
本でも読みたい、買いたいと言っている。
本とは情報だけではない何かなのだろう。
『困ってるひと』単行本は6月10日ごろ発売予定。
最近の流行語でいえば「レベル7」のインパクトを読書界に与えてくれるだろう。
なお、同時に続編もスタートする予定だ。
さて、高野プロデュース第2弾がスタートする。
著者はこのブログや私の本(『異国トーキョー漂流記』と『腰痛探検家』)でも
おなじみのアブディン。
盲目のスーダン人なのに、天才的な日本語つかいであり、
今回も「語り下ろし」やゴーストライターは使わず、
本人が自分で書く。
正直言って、アブより文章のおもしろいライターなどほとんどいないから当然だ。
タイトルは本人の希望で「わが盲想」と決まった。
これがヒトラーの「わが闘争」のパロディと気付く人がどのくらいいるかわからないが、
気付かなくてもユーモアたっぷりなのはうすうす察せられるだろう。
彼は目が見えないので、編集者との打ち合わせやゲラの直しなどが普通のやり方ではできないし、本人はかなり怠け者なので、困難も予想されるが、
ふつうに行けば「困ってるひと」と同じく
「レベル7」の作品になることは避けられない見通しだ。
連載スタートは「続・困ってるひと」と同じ頃の予定。
『困ってるひと』も『わが盲想』もあっさり講談社エッセイ賞とか受賞して
私をまた悔しがらせてほしい。
(今アブディンはうちに泊まっている。
これからアメリカ大使館にビザの申請に行くというので私もつき合わされることになった。
見るからに怪しい二人組なので、アメリカ以前に大使館に入れるか心配だ。)

関連記事

no image

となりのツキノワグマ

ツバルが沈まなくて驚いたばかりだが、 またしても環境問題の常識が覆される本を見つけた。 宮崎学『と

記事を読む

no image

医学界に進出

「週刊医事新報」なる医学雑誌が自宅に届き、何事かと思ったら 私の本が紹介されていた。 神奈川県葉山

記事を読む

no image

リキシャ・アートは語る

バングラの印象といえば、リキシャ。 自転車がひっぱるサイクルリキシャがメインだが、 人間を乗せるだ

記事を読む

no image

オススメ土着的流行歌

今日は珍しく音楽の紹介をさせていただきたい。 シングルCD エコツミ「さくらの日」 二年前になる

記事を読む

no image

ストロベリー・ロード

仕事上の必要から石川好『ストロベリー・ロード』(上・下、文春文庫)を読んでみたら、 これがもんのすご

記事を読む

no image

野宿の話はつづく

「高野さん、この前うちの近くで野宿してたでしょ?」と水泳のY先生にレッスンのあとで言われて驚いた。

記事を読む

no image

幼児の気持ち

依然として声が出ない。 ずっと考えているのだが、これはやはり「今日のおりょうり」のインタビューで

記事を読む

no image

アスクル人、カンヌを制す!?

『アスクル』に登場している沖縄の映画プロデューサーの井手君が上京、またうちに泊まっている。 毎晩、真

記事を読む

no image

トルクメニスタン特集

毎回ディープな特集で楽しませてくれるバンコク発の特殊月刊誌「G-Diary」。 ちょっと遅くなって

記事を読む

no image

タイの黄金のバーミヤン

バンコクから入り、西のラッブリー県というところに行った。 観光客はほぼゼロだが、なぜかバーミヤンみた

記事を読む

Comment

  1. ゆき より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.1; WOW64; Trident/4.0; YTB730; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C)
    アブさんのおはなし楽しみです!

  2. nil より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; ja; rv:1.9.2.16) Gecko/20110319 Firefox/3.6.16 ( .NET CLR 3.5.30729; .NET4.0E)
    小島剛一、大野更紗、そしてアブディンという超ヘビー級作家を次々とプロデュースするとは、もはや出版界のドン・キング、いやカス・ダマトですね!
    好機を逃さず「高野秀行エンタメノンフィクション道場」を開設、殺到する生徒からの莫大なあがりを原資に某国入管職員を買収、休止中の「怪魚」プロジェクトを神に祈らずカネにまかせて再開するというのはいかがでしょうか?

  3. Joe より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.1; en-US) AppleWebKit/534.16 (KHTML, like Gecko) Chrome/10.0.648.204 Safari/534.16
    大野更紗さん「困ってるひと」との出会いは、本当に衝撃的でした。 単行本は自分で読んだ後、両親や家族にも読んでもらいたいと思っています。 続編も読めるなんて幸せ!!
    ブログ、Twitterなどの普及で、筆者と読者の心の距離感が全然違ってきているんだと思います。 全力で応援したいって気持ちです。
    アブディンさんの「わが盲想」もすごく楽しみ♪

ゆき へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年7月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑