*

来たれ、ポロロッカ!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様

昨日、『困ってるひと』に重版がかかったという知らせが届いた。
発売後たった6日のことだ。
よく「発売後たちまち重版!」なんて宣伝文句が広告にのっているが、
発売一週間もたたないで重版なんて、最初からわざと少なめに刷っている「計画的重版」じゃないかと疑っていたのだが、本当にあるのかと驚いた。
私の新刊は「売れる」ということとは無縁なので、よくわからないが、
片野ゆか『犬部!』(現在9刷、実売2万数千部)と比較しても倍以上のスピードなのはたしか。
つまり、その類推からいけば、少なくとも5万部は行くだろう。
10万部突破も十分ありうる。
昨日、重版以上に嬉しい知らせだったのは、あの名作『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)を書いた窪美澄さんが『困ってるひと』をツイッターで熱烈にプッシュしてくれていたということ。
ここ2,3年でも抜群に優れた、純文学とエンタメを超えたあのすごい小説を書いた人に
「まえがきを読んだ瞬間から持っていかれます」「ものすごい筆力の持ち主」と評された。
破格のことだと思う。
一般の読者には受けているが、本当にシビアな読者の目に耐えるのだろうかという
最後までつきまとっていた不安がやっと解消された。
もしかすると今年を代表するベストセラーになるかもしれない。
私も、「あの有名な本をプロデュースしたとかいう人」として世に認識され、
「高野秀行ってなんだかよくわからないけど、あの大野更紗を世に出したというなら、
面白いのかもしれない」と、本を手にとってもらえるかもしれない。
ていうか、すでに私の本をまったく知らないのに、「『困ってるひと』のプロデューサーというなら会ってみたい」という有名人の人がいるのだ。
こうして、今は細々と流れている高野本も、優秀な弟子の恩恵を受けて、どばっと売れてしまう。
おおっ、まさにアマゾンの大逆流ポロロッカのようではないか。
唯一残念なのは、営業活動の大チャンスである来月中旬から8月下旬まで
私がアフリカに行ってしまい、インタビューも取材も対談もラジオ・テレビ出演も何も受けられないこと。
草葉の陰から世紀の珍現象を見守りたい。

関連記事

no image

「イスラム飲酒紀行」気持ちは早くも第2弾

今月25日に発売予定の新刊『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)の予約受付がアマゾンで始まった。 なぜかわ

記事を読む

no image

なぜ知っているのか

渋谷で、メディアファクトリーの担当Nさんと打ち上げ。 Nさんによれば、『間違う力』は社内ではたいへん

記事を読む

no image

アスクル人、カンヌを制す!?

『アスクル』に登場している沖縄の映画プロデューサーの井手君が上京、またうちに泊まっている。 毎晩、真

記事を読む

no image

西原理恵子『できるかな クアトロ』

私が「解説」を書いた西原理恵子の『できるかな クアトロ』(角川文庫)が届く。 漫画部分は例によって

記事を読む

no image

旅に出るにはワケがある

わけあって部屋の片付けをした。 ゴミためのようで、足の踏み場もなかったのだが、 片付けるとウソのよ

記事を読む

no image

残念な人

話題の『KAGEROU』の発売日にポプラ社の編集者にたまたま会い、一冊もらったので 昨日読んだ。 内

記事を読む

no image

後輩・角幡唯介が開高健ノンフィクション賞を受賞!

猛暑がつづく中、また難民シェルターに行き、コソヴォ出身のアルバニア人に話を聞く。 おみやげに井浦伊

記事を読む

no image

ミャンマーとタイ

私の昔なじみの国が二つ緊迫している。 一つはミャンマー。 総選挙でアウン・サン・スー・チーが立候補で

記事を読む

no image

交通事故は危険

ナイロビ在住のフリーのカメラマン、中野智明さんと約10年ぶりに会い、 エチオピアの話をきく。 アフリ

記事を読む

no image

「飲み」の黄金世代

一緒にコンゴにも行った駒大探検部の先輩・ノノさんがついに結婚、 新婦の地元で式と披露宴が行われた。

記事を読む

Comment

  1. 山中温泉 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.0; Trident/4.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; .NET4.0C)
    「困ってるひと」快調ですね。良かったですね。
    高野さんの喜びが素直に出てますね。
    でも「ポロロッカ」と「草葉の陰から」は使い方が間違ってるような気が…

  2. コシチェイ より:

    AGENT: DoCoMo/2.0 N05A(c100;TB;W24H16)
    「もしかすると…」以降が高野さんらしいな、って思います。

  3. ミジンコ より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (compatible; MSIE 9.0; Windows NT 6.0; Trident/5.0)
    「草葉の陰から」は「お墓の中から」という意味だったよな~、って思っていたら山中温泉さんに指摘されましたね。
    「困ってるひと」の63~64ページの「享年25歳」も年と歳がダブっておかしな表現ではありますが最近はこの表現も多く見受けられると辞書にありました。
    言葉は生き物ですね。

  4. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.0; WOW64) AppleWebKit/534.30 (KHTML, like Gecko) Chrome/12.0.742.100 Safari/534.30
    「草葉の陰から」はもちろん(つまらない)ジョークなのだけど、
    みなさん、疑っておいでですねー。
    ま、間違う力ですからね。
    無理もないか。

  5. asajiro より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.2) Gecko/20100115 Firefox/3.6
    草葉→アフリカのボウボウと生い茂る場所を掻き分けて、そこにテントを張る高野さんのイメージが浮かびますね。bon voyage

  6. 山中温泉 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 6.0; Trident/4.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; .NET4.0C)
    ごめんなさい、
    私のまずいコメントが皆さんに不快感を与えたことをお詫びします。
    高野さんのボケの「草葉の陰から」に
    「なんでやねん!」と突っ込みたかったんです。
    でも言葉が足りなかったですね。
    反省してコメントを付けるのは自主規制します。
    (期間は未定)
    私が高野さんのブログを見るのは
    高野さんの文章が大好きだからです。
    まじめな言動とは逆な暴走的妄想が素晴らしいです。

  7. 高野秀行 より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows NT 6.0; WOW64) AppleWebKit/534.30 (KHTML, like Gecko) Chrome/12.0.742.100 Safari/534.30
    いえ、誰も不快感なんてもってないでしょう。
    ここにはそんなに心の狭い人は来ませんから。
    反省や自主規制は一般の人々に任せて、
    われわれはどんどん間違って行きましょう!

ミジンコ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年12月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑