*

小説家になるのは大変だ!

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


土曜日、モスク取材とその後の予定について打ち合わせをしていたら、
ホテルの部屋に戻ったのはもう12時半。
今日こそは早く寝ようと思ったが、持ってきていた鯨統一郎『努力しないで作家になる方法』(光文社)を読み始めたら、どうにも止めることができず、結局全部読んでしまった。
妻子持ちの鯨さんは、厳しい営業職を勤めながら、17年小説を書き続け、
40歳にしてデビューしたという、悪戦苦闘の記録だ。
ここまで苦労して作家になった人もいるのかと正直驚いてしまった。
途中までは投稿しても投稿しても落ちつづけ、こう言っては悪いが、
どうみても将来はなさそうなのだが、それでも続けていたら夢が叶ってしまった。
小説家を目指す人がこれを読んだら勇気づけられるのだろうか。
「ここまでしなきゃデビューできないのか」とショックを受けるのだろうか。
いずれにしても同じ文筆業でありつつ、小説家がどうやって書いているか全く知らない私にとっては、興味津々の内容だった。
私も創作ノートを作ったほうがいいのだろうか?
       ☆         ☆        ☆
おかげで寝たのは明け方4時。
8時半に起きて、別のモスクを取材し、
今度は特急に乗って、江戸川へ。
区立中央図書館で講演会。
十代の若者を対象とした講演会だというので、
いつもとはがらっと変え、「辺境の旅に学ぶ災害支援」なるテーマであくまでマジメに語ったのだが、どうにも受けなかったみたいで、寝ている人がたくさんいた。
質疑応答になると、突然みなさん、目が輝き、
「いちばん見つかりそうな怪獣は何ですか?」とか「アヘンをまた吸いたいと思いますか?」といった質問ばかり。
何のことはない、客層は「のまど」のときと全く同じだった。
なんか騙された気分だ。
でも、私のくだらん話を聞きに来たのに真面目な、しかもつまらない話を聞かされたお客さんはもっと騙された気分のはずで、申し訳ないとしかいいようがない。
手伝いに来てくれた杉江さんと、今季悲惨な状況にあるレッズとジャイアンツについて
それぞれ愚痴をこぼしながら、新小岩の居酒屋でぐだぐだ飲んでいた。

関連記事

no image

【訂正】岡野雅行『野人伝』

このところ忙しくてブログを書く時間がなかなかとれないが、 岡野雅人 岡野雅行『野人伝』(新潮社)だ

記事を読む

ミャンマー納豆紀行

業務連絡を兼ねたお知らせ。 今月19日より1ヶ月ほどミャンマーに行く予定だ。 もっと早く公表した

記事を読む

no image

あの湖が…!!!

Google Mapというのをご存知だろうか。 私は意外にも知っていたが、ミャンマーをちょこっと検索

記事を読む

no image

『誰も国境を知らない』

西牟田靖『誰も国境を知らない』(情報センター出版局)の書評を 「北海道新聞」に書く。 新聞の書評は

記事を読む

no image

今年も奇書で行きます

新年あけましておめでとうございます。 今年は高野本プチバブル最終年になる。 新刊、文庫合わせて5冊

記事を読む

no image

新計画?!「イラワジ河(ほぼ)全流下り」

 昨日から今日にかけて、突然新しい探検計画が生まれた。  その名も「イラワジ河ほぼ全流航下紀行」とい

記事を読む

no image

ナカキョー、直木賞を受賞

私が前々から熱烈に推薦するナカキョーこと中島京子さんが 『小さいおうち』(文藝春秋)で直木賞を受賞

記事を読む

no image

シリア・イラク国境地帯の驚異

ユーフラテス河沿いに進み、イラク国境近くの町にいる。 シリアの他の場所は砂漠ばかりだが、この河沿いだ

記事を読む

no image

2011年のベスト本はもう決まった!

数日前、増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)を読了した。 これほど面白くて

記事を読む

no image

日本の路地を旅する

いやあ、昨日は日本がカメルーンに勝って驚いた。 誰がどう見てもダメだというチームが勝ってしまった

記事を読む

Comment

  1. 齋藤太郎 より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; GTB7.0; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    高野さま、
    昨日は暑くてしかもお疲れのなか、どうもありがとうございました。
    朝日新聞出版の齋藤太郎と申します。年来の高野さんファンとしましては、熱心な一読者であり続けようと思っておりましたが、先日更紗さんの講演会で初めて実際にお見かけして以来、つい、一緒に本を作れましたら、と夢想をはじめてしまいました。ご相談をお願いする以上、より多くの読者に読んでいただけますよう(売れるように)鋭意お手伝いをさせていただけましたらと存じております。
    お忙しいとは存じますが、もしご挨拶にお伺いできるお時間がございましたら、お願いできましたら幸いです。
    その際はご都合の良い場所、お時間をご教示ください。
    どうぞよろしくお願い申し上げます。
    ps:所属は「ビジネス編集部」ではありますが、いろいろな本を出しているので高野さんの本もまったく大丈夫です。
    齋藤太郎拝

  2. 読者 より:

    AGENT: SoftBank/1.0/840P/PJP10/SN353164031783845 Browser/NetFront/3.4 Profile/MIDP-2.0 Configuration/CLDC-1.1
    ガソリン携行缶、「フランスへ」と言われたこと、漁師の方の見聞の広さ、話を聴くこと等… 自分の経験と少し重なり救われる思いでした。そして高野さんの声は耳触りの良い声です。しみじみ。以前J-WAVEのBOOK BARでも良いと言っていました。

読者 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年5月
    « 3月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
PAGE TOP ↑