突然、魂の叫び
公開日:
:
最終更新日:2012/05/28
高野秀行の【非】日常模様
どこか遠くへ行きたい−−。
これは平凡な日常に飽きた人間がよく思い浮かべることだろう。
私もよくそう思う。
しかし、私の場合、ただ遠くへ行くだけでは気がすまないから厄介だ。
じゃあ、何が必要か。
探し物がしたい。
どこか遠くへ行って、探し物がしたい。
それも「幻の〜」とか「謎の〜」なんて形容されるものや、昔はあったけど今は失われてしまったもの、あるいは忽然と姿を消してしまったものを探したい。
人でも動物でも旧日本軍の宝でも珍しいコーラのビンでも何でもいい。
知力・体力・気力を総動員して探したい。
しかし、今のところ、探すものがない。
「二十年前に失踪した父親が実は中東のどこかで生きているらしい…」
なんて母親が打ち明けてくれれば飛びつくのだが、残念ながら私の父親は東京のはずれで呑気にガーデニングなどしている。
「ふざけんな、オヤジ!」と憤りすら覚える。
こうなったら、他人の父親でもいいとさえ思える。
いや、父親じゃなくてもいいのだ。何でもいいのだ。
誰か私に「探し物」を教えてほしい。
ゲーテは死ぬ間際に言った。「もっと探し物を!」と。
ガリレオは異端審問のあと、こうつぶやいた。
「それでも私は探す…」
犬養首相にいたっては暴漢に向かってこう叫んだ。
「探せばわかる!」
嗚呼、誰か、私に探し物を教えてくれえ!
ミッションを与えてくれえ!
突然ながら、私の今現在の魂の叫びでした。
関連記事
-
-
謎の独立国家ソマリランド大吟醸拾年古酒
仕事場にしている「辺境ドトール」は昭和の世界だ。 店長夫妻が常に店におり、私たち常連の客と交流
-
-
うう、気持ちわるいのに…
土曜日は、「アスクル」仲間の二村さん(ゾウに追いかけられている人)と 金澤さん(道場破りでリクルー
-
-
凶悪犯罪者に見る人間の神秘
ブログを始めて困ったのは、自分がろくに仕事もしてないし、心身のトレーニングをすっかり怠っているこ
-
-
深谷陽というアジア風天才漫画家
日本にいる時間が残り少なくなってきたので、 駆け足で紹介。 先日行われたmixiのイベントに、純粋
-
-
ゴール目前で足がつったマラソンランナー
2月刊行の『謎の独立国家ソマリランド』が佳境だ。 すでに地図、相関図、ソマリ群雄割拠之図、口絵のカ
-
-
おもしろくないことがおもしろい
キタ帰国の二日後、つまり6日から9日まで沖縄に行ってきた。 10年以上前、大連に短期留学をしたときさ
-
-
東電に勇気と可能性をもらった
昨日、友人のワタル社長に驚くべき話を聞いた。 東電は今、人手が足りないのか、会社自体が混沌としている
-
-
ノンフィクションの世界はここから始まる
自分も寄稿した本が届いた。石井光太・責任編集『ノンフィクション新世紀』(河出書房新社)。
Comment
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
探し物ありますよー。
新しい私の仕事を探してください(笑)!
コンサル業を廃業して新しいことしたい病にとりつかれております。
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1)
申し訳ありませんが、そのような抽象的なオファーはお断りしております。
私の探し物は質量を伴ったもの、もしくは写真や映像、録音に収められるものに限ります。
新しい仕事なら、私の知っているAISAという会社をオススメします。すぐ採用されるのではないでしょうか。
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
> 質量を伴ったもの、もしくは写真や映像、録音に収められるものに限ります。
なるほど。
牛久沼には本当に河童がいるのか(私のダンナはいると言い張ります)みたいな。
うー、スケールがちっちゃいですね・・・
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.5; Windows 98; Win 9x 4.90)
ミャンマーのカカボラジに行く道を、そのまま東に向きを変えて中国に向かう。 外国人には人跡未踏だし、訳のわからない話がいっぱい転がってるし
高野さん向けでしょう。
ミャンマー最大のインド−ジ湖の外国人が立ち入れない地域で魚釣りをする。 巨魚がいるそうです(本当か?)
1980年代末期に絶滅したと言われるチンドウィン川の川イルカを探せ!!
最後はN会長もご存知のチンドウィン川の龍、又はイラワジ川の龍を
探せ!!
カヤ州ならもっと面白話が転がってますよ、外国人は入れないけど
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
ぜひ!
インドの『謎の怪魚 ウモッカ』を探してください!
ウモッカについては、こちらのサイトを。
http://homepage3.nifty.com/Daiou3/
NONOさんの記事もありますよー。
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
ニューギニアのアマゾネスはどうでしょうか?
W大探検部も調査しているみたいですし。
インドネシアのパプア州側はともかく、パプアニューギニアサイドは
個人的にまもなく自由アクセスが可能になりますので!
あ、僕が行くわけじゃなかった。。。
AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1)
あの−、義姉の住むオーストラリアには探すのを商売にしている人たちがいるのでちょっとご紹介します。それは野生馬の群れを探して追いかけ、その子馬を捕まえて売る商売なんですね。そういう人たちは家族や仲間で原野を馬の群れを探しながら、転々と居住地を変えていくんです。適当なところに丸木で掘っ立て小屋を建てて、また次の場所へ移るという次第で。ふつうそんなことをしたら違法建築で捕まるはずですけど、市役所も彼らの居所を探しきれないんでしょうね。税金なんかもどうしてるんでしょうね。税務署も彼らを探しきれないということなんでしょうか。なんだかマタギに近い生活ですねえ。オーストラリアは人口のわりに国が広すぎるので、何となく法律の目からこぼれてしまったような人が時々います。
沈香はトラの敵
以前、マレーシア南部のジャングルに入った時、ガイドとして雇った先住民族の男性が川の浅瀬で何かを拾い上げた。ちらりと覗くと、大きめの焼き芋程度の木切れのようだったが、後生大事にバッグにしまっていた。『gharu』という名の香木樹脂であるということであった