旅のうねうね
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高野秀行の【非】日常模様
宮田部長がツイッターでつぶやいていたのを見て、グレゴリ青山の旅エッセイ漫画『旅のうねうね』を読んだ。グレゴリさんの旅漫画は好きで、前はよく読んでいたが、とんとごぶさただった。
読んでみたら、実におもしろい。
部長は「旅というのはこういう些細な部分に趣があるのだ」みたいなことを言っていたが、まさにその通り。
国内の話もあれば、海外の話もある。20年前の話もあれば、つい最近の話もある。
いろんなものがごっちゃになった掌篇の集まりで、どれも何が特にどうという話ではなく、むしろ「しょーもないなあ」とちょっと笑える程度の話なのだが、無性に味わい深い。
三回も続けて読み直してしまったほどだ。
その味わい深さはポルトガル語の「サウダージ」に似ている。
サウダージは「郷愁」とか「なつかしさ」と訳されることが多いが、過ぎ去ったものや遠くにあるものへの懐かしさや恋しさ全般を表す感情だと思う。そしてその中に「旅情」も含まれるのではないだろうか。
こういうのは文章では書けない。書いても数ページだし、「だから何?」という感じになってしまう。
この本を読みながら、私も自分の「旅のうねうね」をいくつも思い出した。初めて旅情を感じた20年前の素朴なバンコク、上海付近のポロロッカを見に行った話、世界で一番大きな茶の木を探しに行った話、中国の「性感劇場」、コンゴの変な習慣「ドフンド」、台湾の原住民を訪れたときのこと、カンボジアのマッサージ、韓国で受けたいろいろな「接待」のこと…。
エッセイのネタにもならない、でも忘れがたいこれらの話を、グレゴリさんが漫画にしてくれたらなあと夢想してしまうのだった。
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※このコラムは◆週間 辺境・探検・冒険ML MBEMBE ムベンベ Vo.2◆に掲載されたものです。
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Comment
最後の高野さんの「旅のうねうね」、どれもどの本にも書かれてないですよね?
ムベンべやジャナワールのスケールとは対極の、そういう話を集めた本をぜひ出してください。