*

ロンドンのカート居酒屋と在仏ルワンダ難民のワイン

公開日: : 最終更新日:2012/10/03 高野秀行の【非】日常模様

 十日くらい前からどうも胃腸の調子がよくなかったのだが、酒を飲むと不思議に治っていた。そのうち、朝や昼でも調子を整えようと酒を飲み、
しかもけっこうな量を飲んでいたところ、三日前に突然、胃腸が仕事を全面的に放棄してしまった。
 ちょっと食べただけで胃がきゅうと痛み、ひどい下痢としてしか消化しない。

 一昨日と昨日はお菓子を少し食べたくらいで、今日はキャベツのスープを作って飲んだが、結果は変わらない。
 まあ、胃腸を休めろということなのだろう。

 それでも仕事はそれなりにしているし、本も読んでいる。
 一昨日読んだのは中島京子さんの新刊『のろのろ歩け』(文藝春秋)
 北京、上海、台湾を舞台に、日本の微妙な年頃の女性(20代後半から三十代半ば)が現地を旅し、向こうで知り合ったインチキくさい男を通して、
異文化や異国に入り込んでいく様子をほのぼのと描いた中篇集。

 あまりに今の日中関係からかけ離れていて、全くタイミングがよすぎる。本書を読んでいると、中国人や台湾人にも一人一人生活があり、
その中で日本という国に対する感情が占める割合など1パーセントもないことが実感できる。
 特に最初の「北京の白い春の服」が秀逸。中国人の大きさとまっすぐな感じがとてもよく描かれている。
 「のろのろ歩け」とはナカキョーさんから日本国民に送られた壮大なメッセージにちがいない。

 さて、胃腸痛を紛らすために地図帳や航空券情報を見たりしているうち、どうしてもヨーロッパとアフリカに行きたくなり、今月末から1カ月出かけることにした。
ヨーロッパはフランスとイギリス。フランスは20年ぶり、イギリスに至っては初めてだ。
 辺境作家からいよいよ正統的なノンフィクション作家へと脱皮していくのだ!…と言いたいが、実際にはロンドンのカート居酒屋(たくさんあるという)にどうしても行ってみたいのと、
フランスには昔から親しくしているルワンダ人の友人が住んでいて(七年前に難民として移住した)、前々から「是非来てくれ」と言われているので、訪問するだけである。
 こちらでは土地のワインとチーズを用意してくれているという。

 カートとワインの前に、胃腸を何としても治さなければいけないと決意しているところだ。
 

関連記事

no image

メモリークエスト2

遅ればせながら、ようやく『メモリークエスト』の続編を開始することが正式決定した。 現在、幻冬舎の編集

記事を読む

no image

宮田珠己がソマリランドとソマリアに迫る!

またまたイベントのお知らせです。 『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)発売記念 高野秀

記事を読む

ここで問題です。

朝日新聞社で角幡唯介と対談。 読書週間特集で「探検・冒険の本」を私たち二人が紹介するというのが

記事を読む

no image

ミステリ・ノンフィクションの傑作『龍馬史』

ちょっと前まで「学者」というのは圧倒的に年上の先生ばかりだった。 だが今は本のプロフィールを見

記事を読む

no image

マイブームじゃなかった…

依然としてマイ・ブームとして続いている「自閉症モノ」、 3冊目に読んだやはり泉流星の『僕の妻はエイリ

記事を読む

no image

東京うんこナイト

探検部の後輩が2月5日、東京うんこナイト 〜ウンコロジー入門。「のぐそ」は地球を救えるか?〜」とい

記事を読む

no image

これが例の葉っぱ

ソマリランドに「帰国」してもう10日近く経つ。 「帰国」なんて言葉を使ったのが行けなかったのか、今

記事を読む

no image

濁った水たまりで釣りをする

アブディンから電話がかかってきた。 彼は結局、身重の奥さんと北九州に「疎開」した。 スーダンの実家か

記事を読む

no image

溝畑宏とイビツァ・オシム

木村元彦作品読書週間が続いている。 次に読んだのは『溝畑宏の天国と地獄 大分トリニータの15年』(

記事を読む

no image

日本浄土

 最近手元に置いて、仕事が手につかないとき、 つまりしょっちゅう、ページをめくるのは 藤原新也『日

記事を読む

Comment

  1. mk より:

    カートと美味しいワインとチーズ…でも何より大切な奥様とマドちゃんの為にも是非病院に行って下さい。お願いします。 お大事になさって下さいね。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2026年1月
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    262728293031  
PAGE TOP ↑