*

南米からの便り

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


 実家の母から「あんた宛に外国から手紙が届いている」と電話が来た。
八王子の実家を知っているというのは、かなり古い知り合いだ。
いったい誰だろう?
 母は外国語が全くわからないので、差出人のローマ字のつづりを電話口で読んでもらった。
すると「ARGETINA」…アルゼンチン、これは国の名前だ!
「あ、じゃあ、これかな?」と母が言い、再び読んでもらうと、
「CORREO」…それはスペイン語で「郵便」のことだ!
…といつまでも親子漫才から脱出できないので、しかたなく転送してもらった。
すると、なんと驚いたことに差出人は「サッソン」とあるじゃないか!
18年前、アマゾンを遡ったとき、ジャリという町で出会った南米一の大道芸人だ。
彼には『アマゾンの船旅』(『巨流アマゾンを遡れ』の親本)を一冊送り、
その返事が来たが、それから17年、何の音沙汰もなかった。
手紙はスペイン語で書かれており、
内容は、
「元気か。俺は今ブエノスアイレスにいるが、来年はアマゾンのジャングルに戻る。
だからお前もまたアマゾンに来い」
という簡潔かつ意味不明なもの。
うーん、私は彼の手下だったのか。
でも久しぶりに会いたいな、サッソン。
前回会ったとき48歳と言っていたから、今はもう60代も半ばのはず。
あのままじいさんになっているんだろうか。
南米が私を呼んでいる…ような気がする。

関連記事

no image

旅のトリビア「たびとり」

突然だが、フジテレビの「トリビアの泉」という番組をご存知だろう。 何の役にも立たないが、面白い(とい

記事を読む

no image

陰と陽

月刊「日経エンタテイメント」の取材を受ける。 今までは『怪獣記』だったが、今回初めて『怪魚ウモッカ格

記事を読む

no image

三沢の試合を見よ

アフリカに行っている最中、三沢光晴の急死について、 知人や読者の人たちから多数のお知らせメールをいた

記事を読む

no image

イギリスにもタマキングがいた!

書くのがだいぶ遅くなったが、今年最初に読んだ本は早くも今年最高の本になる可能性がある。 ダグラス・

記事を読む

no image

草食系夫にも推薦

メディアファクトリーという出版社の編集者より、 森岡正博『草食系男子の恋愛学』という本が送られてき

記事を読む

no image

月刊ソマリランド

お伝えしそびれていたが、バンコク発の月刊風俗情報誌Gダイアリーで 三ヶ月連続で「ソマリランド」のこ

記事を読む

no image

宣教師ニコライのファンになる

今、「移民の宴」で在日ロシア人取材をやっているので、その資料として中村健之介『宣教師ニコライと明治

記事を読む

仕事を減らして納豆探究?

慢性的な多忙状態が続いていて、すっかりごぶさたしてしまった。 なにしろ2年ぶりに出た自分の新刊

記事を読む

no image

無料出張上映会&琉球映画

今月から始めた無料出張上映会の第一回が 台東区の施設で行われた。 主催者は旅好きな会社員の人。 その

記事を読む

no image

イタリア人曰く「日本人がアジア人だと思うとき」

大ヒットしている漫画『テルマエ・ロマエ』の作者であるヤマザキマリのエッセイ『望遠ニッポン見聞録』(

記事を読む

Comment

  1. より:

    AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; ja; rv:1.9.0.3) Gecko/2008092417 Firefox/3.0.3
    『海外での知りあった人と、その後なかなか連絡がとれない』と、高野さんが何かに書いていたと思いますが、素敵ですね。サッソンさん。
    私が(失礼ながら)『巨流アマゾンを遡れ』を読んだのは最近ではありますが、もう18年前の事なんですね。最近なのに懐かしく、今、『巨流アマゾン—-』を読み返しましたら、「おれは特別だ。あと百年は生きられる」とサッソンさんの言葉がありました。・・・ということは、まだまだお元気。
    ぜひ、高野さんが南米でサッソンさんと再会し、その顛末を書いてくださるのを楽しみにしています☆

  2. ハル より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    いつも楽しく高野さんの本を読ませていただいております、
    もちろんこのサイトも必ずチェックしております。
    昨日、家の近くの本屋に行ったら高野さんのコーナーが出来てました、いつも私が高野さんの本を買ってたからですかね・・

  3. fjsm より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; Q312461)
    18年もたってそんな手紙をくれるなんて。
    きっとサッソンさんの中では、高野さんはゆかいなヤツ♪って
    強烈な印象を残してるんでしょうね〜
    高野さんはまわりのちょっと変わった人たちの話をよく書いて下さいますが、
    高野さん自身がそうとう変わった方ですよね。
    日常エッセイ・・いけるんじゃないですか?

  4. タカ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 5.5; Windows 98; Win 9x 4.90)
    高野さん、サッソンさんに送った「アマゾンの船旅」って
    スペイン語かポルトガル語で書かれているのですか?
     しかしまあ、こういう「忘れた頃の人からの手紙」っていいですね。
     ハルさんと同じく近くの京王書房に行ったら「幻獣ムベンベを探せ」
    が書店に並んでいましたよ。

  5. たこ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    はじめまして。
    私もちょうど先日、8年前にチリのアリカで知り合った人から、いきなりメールがきました。
    8年も前に渡したメアドの紙切れを未だにもっていたのか?
    とも思いましたが・・・
    南米の人の時間の感覚って一体、どんな感じなのでしょうね?

タカ へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年9月
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930  
PAGE TOP ↑