*

カレセン・アジアン・ミステリ

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様


 「カレセン」のつづき。
 カレセン先生が事件を解決するというなんとも渋いミステリを発見した。
コリン・コッタリル著『老検死官シリ先生がゆく』(ヴィレッジプレス)がそれだ。
 舞台はなんとラオスのヴィエンチャン。
それも共産革命直後の1976年というから渋すぎる。
 シリ先生は愛妻を早くに失った72歳の男やもめ。
もういいかげん、隠居して悠々自適の日々を送るはずが
共産党の気まぐれでたった一人の検死官にされてしまう。
そこに急死した党幹部夫人の遺体が持ち込まれ…。
 シリ先生はサンダル履きで、枯れ切ったじいさんだが、
元はフランス留学したエリート医師で、
72歳の今もいろんな年下の女性から慕われている。
まさにカレセンなのだ。
アジアンなテイストもよい。
「アジアン」と銘打った小説は現場を知っている人間には読むに耐えない
インチキものが多いが、これはちがう。本物だ。
著者はなんと、現在チェンマイ大学で英語の先生をしている。
奥さんはタイ人。
70年代のラオスの調査をしていたこともあるという「本物」なのだ。
しかも文章がすばらしい。
皮肉とユーモアに満ちた、私好みのハードボイルド文体だ。
ああ、こんなブログでなく、ちゃんとした書評をどこかに書けばよかったな。
まあ、いいや。
ともかくオススメである。
 

関連記事

no image

気仙沼産かじき

土曜日、スーパーに買いだしに行ったら、気仙沼産のかじきの切り身が売っていた。 しかも半額。 買ってき

記事を読む

no image

SPA!イスラム飲酒紀行はまだやってます

ときどき「SPA!のイスラム飲酒紀行は連載中止になったんですか?」と聞かれる。 パキスタン篇を2週連

記事を読む

no image

なんといってもインド

ちょうど映画「スラムドッグ・ミリオネア」がアカデミー賞を受賞した日に その原作であるヴィカス・スワ

記事を読む

no image

本の雑誌年間ベスト10入り

担当編集者から連絡があり、「アジア新聞屋台村」が「本の雑誌2006年度ベスト10」の8位になったそう

記事を読む

no image

マリンダは馬じゃない

(右絵:斜め後ろから見た、走り行くマリンダ) マリンダはどんな形をしているのか。 レース中であり、し

記事を読む

no image

就職するならNACK5

昨日(木曜日)、さいたま市を本拠地とするFM局NACK5の番組「セイタロウとケイザブロウのおとこラジ

記事を読む

no image

友だちは反政府ゲリラだけ…

チェンマイにいる。 4年ぶりだが、驚くほど街が変わった。 見知っている建物がない。 だから自分がどこ

記事を読む

no image

絶滅動物の生き残り?

さて、マリンダはいったいなにものなのか。 既知の現生哺乳類にはこんな動物はいない。 ところが、過去に

記事を読む

no image

ユーフラテスの旅の落とし穴

昨日やっとこワンに飛んだ。 延々とつづく茶色の香料として山岳地帯を見下ろし、 「こんなところで河下り

記事を読む

no image

また「テレビみたい」と言われるんだろう

日曜日の朝刊のテレビ欄で知ったのだが、 「ウルルン」の後番組として「地球感動配達人」とかいう番組がは

記事を読む

Comment

  1. komari-ko より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0; .NET CLR 2.0.50727)
    なんですって!こんなブログとは失礼な!
    ーって私が本人に怒ることじゃないですね(笑)

  2. gadogado より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; BT Openworld Broadband; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727)
    以上同意。そんなブログのファンです!

  3. minaxi より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.0.04506)
    こんなブログ?  笑うところ??
    いや、これは、那珂川で2回も沈したという、高野さんによく似た謎の生物の仕業に違いない。

  4. minaxi より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.0.04506)
    アジアの作家は応援しなきゃ、って思って購読しましたが、これイギリス人だったんですね。
    でも 一気に読んでしまいました。
    アジア 好きなんだから しょうがない。
    ラオス人作家も、これぐらい書いて、出版して、日本語に翻訳して、読めるようになってほしいです。 

  5. ねぎ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.04506.30)
    この間、図書館で借りて読みました。
    ものすごーーーーーーーく面白かったです。2ページ目の
    「この失血死は何が原因だ?」「そうですね、体が血を止めていられなかったからでしょう」
    からずっとふふふと笑いながら惹きこまれました。
    今ははやく続きが読みたくてしかたありません。
    高野さんのお勧め本はどれも本当に面白いです。
    これからもお勧めを是非教えてくださいませ。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • アクセス数1位! https://t.co/Wwq5pwPi90 ReplyRetweetFavorite
    • RT : 先日、対談させていただいた今井むつみ先生の『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』(秋田嘉美氏と共著、中公新書)が爆発的に売れているらしい。どんな内容なのかは、こちらの対談「ことばは間違いの中から生まれる」をご覧あれ。https://t.c… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 今井むつみ/秋田喜美著『言語の本質』。売り切れ店続出で長らくお待たせしておりましたが、ようやく重版出来分が店頭に並び始めました。あっという間に10万部超え、かつてないほどの反響です! ぜひお近くの書店で手に取ってみてください。 https:/… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 7月号では、『語学の天才まで1億光年』(集英社インターナショナル)が話題の高野秀行さんと『ムラブリ』(同上)が初の著書となる伊藤雄馬さんの対談「辺境で見つけた本物の言語力」を掲載。即座に機械が翻訳できる時代に、異国の言葉を身につける意義について語っ… ReplyRetweetFavorite
    • オールカラー、430ページ超えで本体価格3900円によくおさまったものだと思う。それにもびっくり。https://t.co/mz1oPVAFDB https://t.co/9Cm8CjNob8 ReplyRetweetFavorite
    • 文化背景の説明がこれまた充実している。イラク湿地帯で食される「ハルエット(現地ではフレートという発音が一般的)」という蒲の穂でつくったお菓子にしても、ソマリランドのラクダのジャーキー「ムクマド」にしても、私ですら知らなかった歴史や… https://t.co/QAHThgpWJX ReplyRetweetFavorite
    • 最近、献本でいただいた『地球グルメ図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味』(セシリー・ウォン、ディラン・スラス他著、日本ナショナルジオグラフィック)がすごい。オールカラーで写真やイラストも美しい。イラクやソマリランドで私が食べ… https://t.co/2PmtT29bLM ReplyRetweetFavorite
  • 2024年9月
    « 3月    
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    30  
PAGE TOP ↑