*

骨と沈黙

公開日: : 最終更新日:2012/05/28 高野秀行の【非】日常模様



年に一度のお楽しみ、本の雑誌増刊の「おすすめ文庫王国2009」で
佐藤多佳子が自分の文庫オールタイムベストテンでミステリを3冊あげている。
そのうちの1冊はレジナルド・ヒル『骨と沈黙』(ハヤカワ・ミステリ文庫)。
私はこの本をだいぶ前に買ったが、読んでいない。
なぜかというと、私が買ったのは文庫になる前のハヤカワ・ポケット・ミステリ。
どういうわけか、私はハヤカワ・ポケット・ミステリが苦手だ。
内容でなく、純粋にあの中途半端な縦長の形がどうもダメなのだ。
おかげで作品自体は読みたくて買ったのに、ポケット・ミステリだからという理由で読んでいない本が何冊かある。
例えば、スコット・ウォルヴン『北東の大地、逃亡の西』もそうだ。
でも佐藤多佳子がオールタイムに選んでいるし、文庫化もされているので
やっと読んでみた。
なんとも重厚な全体小説だ。
とても1990年代に書かれたとは思えない。
『カラマーゾフの兄弟』を連想するくらいだ。
(そういえばあれも殺人事件の謎を追うミステリだった)
ミステリとして出来がいいとは思えず、素直に面白いといいがたかったが、登場人物の書き込みがハンパでないので
読み終わったあとも、ずっと心に残って落ち着かない。
こういうミステリ作品は日本にはまず、ない。
同じダルジール警視シリーズはいくつも出ているので他のも読みたいのだが、
あとはみんなポケット・ミステリで文庫化されてない。
うー、ポケット・ミステリ、どうにかしてほしい

関連記事

no image

韓国で高野本バブル?

韓国での翻訳出版の話だが、すでに刊行された『ワセダ三畳青春記』、 それから出版が決定している『幻獣ム

記事を読む

no image

イケメンなのか昆虫なのか

新潮社にて、トレイルランの第一人者・鏑木毅氏と対談。 さらっとした長髪とにこやかな笑みがなんとも魅

記事を読む

熱気ムンムンの概説書

最近、どうにもオーバーキャパシティで、ブログに手が回らない状態が続いている。 一つの原因は対談本を

記事を読む

no image

活字野球

この前のmixiイベントに月刊「野球小僧」(白夜書房)の編集長が来ており、 その後、野球小僧を4冊

記事を読む

no image

道動物?

月刊プレイボーイの旅特集号で、 前川健一、蔵前仁一の両氏と座談会を行う。 といっても、私はろくに旅の

記事を読む

no image

月刊日本語

日本語教師やそれを目指す人向けの雑誌「月刊日本語」(アルク)のインタビューを受ける。 担当の編集者

記事を読む

no image

本の雑誌年間ベスト10入り

担当編集者から連絡があり、「アジア新聞屋台村」が「本の雑誌2006年度ベスト10」の8位になったそう

記事を読む

no image

立松和平とドンガラ

立松和平氏が亡くなったというニュースを見て驚いている。 というのは、一昨日、たいへん久しぶりにその

記事を読む

no image

インドラの矢

宮崎駿監督の「天空の城・ラピュタ」を見る。二度目。 1986年と宮崎監督のわりと初期の作品だから、

記事を読む

no image

日本の冬

会社員を辞めて山岳ガイドになった後輩と一緒に箱根の山を歩いた。 ただ普通に山歩きをするだけのつもり

記事を読む

Comment

  1. ERIC より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727)
    初めまして。ERICと申します。28歳男性です。
    最近高野さんの本を片っ端から手に取り猛烈に読んで笑わせてもらってます。高野さんの文章はとっても読みやすくて面白い上に勉強になり視点も鋭い。やはり一流のライターが書くものは違うなあと感動してます。
    それにしても実にいろいろな国を訪ねて様々な経験をしてらっしゃるのですね。自分も海外一人旅が好きですがまだまだ辺境にはいったことが皆無だしこれからもほとんど行くことはないと思います。
    でも、一ヶ所くらいは行ってみたいと思いますが面倒くさがり屋なので苦労したくないという感じです。
    URLに添付しましたが私も一応くだらなくて退屈極まりないブログをやっております。
    今後も著書をよまさせていただきたいと思ってます。失礼します。

  2. フレディ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; YTB720; GTB6.3; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    レジナルド・ヒルのダルジール物は昔4冊ほど早川から出てたんですけどね〜。今は品切れで入手不可能のようですが、古書ですと手に入るのではないでしょうか?
    それで確かその中の一冊のあとがきに「ダルジール」は正確には「ディーエル」とかなんとか発音するのだと書いてあったような気がします。
    ポケットミステリは読みづらいだけではなく値段も高いので私も文庫で出してほしいのですが、あまり一般受けする作家ではないんでしょうね。

  3. ねぎ より:

    AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 8.0; Windows NT 5.1; Trident/4.0; GTB6; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729; Creative AutoUpdate v1.10.10)
    うちの連れも、私がポケミスを読んでいると「その妙に間延びした気味の悪い黄色いの読むのヤメテ!」と蛇蝎のように嫌います。
    ダルジール警視シリーズおもしろいのに〜
    パスコーの奥さんとダルジールの丁々発止のやりとりにパスコーがビクビクしたり、笑ってしまいます。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇のお知らせ

高野さんより、「デビュー35周年記念・自主サバティカル休暇」のお知らせ

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

→もっと見る

  • 2025年7月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031  
PAGE TOP ↑