ドンガラさん、15年ぶりの緊急来日
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高野秀行の【非】日常模様
私がかつて翻訳したコンゴ文学の名作『世界が生まれた朝に』(小学館、絶版)。
その著者であるエマニュエル・ドンガラさんが来日したと弟のジェレミーから連絡を受け、
急遽、恵比寿にあるコンゴ大使館へ会いに行った。
コンゴやアマゾンに一緒に行った鈴木邦弘さんと奥さんのときこさんもやってきた。
コンゴは昨年末に初めて大使館をつくった。
その設立に尽力し、現在トップの地位(領事)にあるのがジェレミーなのだった。
ドンガラさんは今年72歳になるはずだが、最後に会ったときとあまりに変わってないのに驚いた。
5年前に再婚したという、少なく見積もっても20歳年下のフランス人の奥さんを伴い、黄色とグリーンを基調としたアロハのようなシャツを着ている。
えらく若々しい。
大らかで呑気な雰囲気もそのまま。
大使館の客間で、コンゴの「ンドキの森」を撮ったTBS「世界遺産」をみんなで見ていたとき、途中でCMが入って日本の学校が写ると、
「え、これ、コンゴ?!」と驚きの声をあげ、
「そんなわけないでしょ!!」とみんなに突っ込まれていた。
そのうち、ジェレミーが気を利かせて日本酒やスルメ、ピーナッツを出してくれ、
プチ宴会状態。
映像は、コンゴ民主共和国(旧ザイール)のキンシャサを舞台にしたドキュメンタリー映画「キンシャサ・シンフォニー」に変わり、
私たちはどっぷりコンゴとリンガラ語の世界に浸っていた。
ジェレミーがときどき長いこと席をはずしているので、
「何してるの?」と訊いたら「あ、今ビザを出してた」というのでびっくり。
そうか、ここは駐日コンゴ大使館で、今彼は業務中なのか。
すっかり自分がどこにいるのかわからなくなっていた。
(写真:私の右がドンガラさん、左がジェレミー)
コンゴ、いいなあ。
ジェレミーがコンゴの首都ブラザヴィルに家を建てているというので、完成の暁にはぜひ訪ねてみたい。
あと、『世界を生まれた朝に』、読みやすくて深い、いい作品なので、
ぜひどこかで文庫化してくれないものか。
個人的な希望はハヤカワepi文庫だが、どこでもいいです。
今なら私とドンガラさんのツーショット写真をオマケに付けますので、お早めにご連絡ください。
追記:
・ドンガラさんとジェレミーについては『異国トーキョー漂流記』(集英社文庫)に書いています。
・「キンシャサ・シンフォニー」はコンゴの庶民がオーケストラと合唱団を組んで
ベートーヴェンの第九を上演するという、驚異のリアル・ストーリー。最高だった。
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Comment
おぉ!高野ファンとしては懐かしい面々の名前が。
そう。絶版なんですよね。
手に入れて読んでみたいと願っていますので
ぜひkindle版でも文庫化でもいいので、読ませてください。
お願いします。
「世界が生まれた朝に」の主人公が列車の汽笛を鳴らすとき、短い音を3回、長い音を3回、短い音を3回、鳴らしていたように記憶しているのですが、これってモールス信号のSOSと同じですよね。偶然の一致なのでしょうか?それとも何か深い意味があるのでしょうか?
>こーすけさん、
そうですよね、電子書籍なら「再出版」可能ですよね。
小学館、やってくれないかなあ。
>ドンガラさんに質問ですさん(ていうのもマヌケだが)
それは気づきませんでした! 今度ドンガラさんに訊いてみますね。