*

ソマリランドの歌姫、来日!

公開日: : 最終更新日:2016/08/22 高野秀行の【非】日常模様

2016.08.01sahara

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリースされた。
タイトルはずばり「愛しきソマリランド」

この女性歌手の名前はサハラ・ハルガン。
80年代半ば、旧ソマリアの軍事独裁政権がソマリランド、とくにハルゲイサの市民を無差別に爆撃、銃撃し、
数万人が殺害され、数十万人が難民となって隣国のエチオピアに逃げ込んだ。
このときの記憶がソマリランド人をして「二度と南部のやつらとは一緒に国作りはできない」と思わせ、
“独立国家”ソマリランドが今に至るまで維持されている大きな要因の一つとなっている。

当時、難民キャンプは難民の逃げ場だけでなく、反政府活動の拠点ともなっていた。
サハラはここで看護師として負傷した兵士の手当を行いながら、彼らを慰める歌をうたっていたという。
サハラ・ハルガンの「ハルガン(Halgan)」とはソマリ語で「レジスタンス兵士」の意味である。

この話、どこかで聞いたことがあるなと思ったら、それは私がインタビューしたソマリランドを代表するミュージシャン、アブディナシル・マアリンだった。
アブディナシルは旧政府軍に胸を銃撃され、瀕死の重傷を負い、エチオピアのキャンプに逃れた。キャンプで反政府軍を鼓舞する歌をうたっていたと言っていたのだった。
(詳しくは拙著『恋するソマリア』をご参照ください)

CDにはDVDが付いていたのでそれを見たら、ソマリランドで撮影が行われており、
なんとアブディナシルが伴奏していた。
2人はキャンプ時代からの盟友らしい。
アブディナシルが認めているということは、サハラは間違いなく、ソマリの伝統音楽歌手としても一流だということだ。

さて、その後、サハラはソマリ人にしてはとても珍しいことにフランスに亡命し、音楽活動を始めたという。
現在は、それぞれ西アフリカの音楽にインスパイアされた2名のフランス人ミュージシャンとともにサハラ・ハルガン・トリオを結成。ソマリ音楽と西アフリカ音楽がミックスしたような不思議なメロディーラインの曲を放っている。ただし、歌はすべてソマリ語。「デゲール(戦争)」や「ソマリランド」といった歌も収録されている。
今では世界各地をツアーでまわっているらしい。

そのサハラ・ハルガン・トリオが8月30日(火)にスキヤキ・トーキョーというイベントに出演するため、来日することになったという。また、今月29日(月)にはでサハラ・ハルガンのドキュメンタリー映画上映とトークイベントが行われるそうだ(主催:ビューローエクスポート)。
残念ながら私は月末までパキスタンにおり、参加できるかどうか微妙だが、
ソマリランドを肌で感じる貴重な機会なので、ぜひお勧めしたい。
詳しくは以下をご参照ください。

——————————————————————————
* Event: SUKIYAKI MEETS THE WORLD & rakaoke PRESENT
『ソマリランドの唄』
* Date and Time: 2016年8月29日(月)
開演:19時 (開場:18時45分)
* Place: アンスティチュ・フランセ東京 – エスパス・イマージュ (東京都新宿区市谷船河原町15)
* 入場無料・事前予約必須 (予約方法はこちら: frecho.com/fr/2016/07/sahra-halgan-2016-jp)
※座席数に限りがあるため、ご予約はお早めにお済ませいただきますようお願いいたします。
* 本邦初公開となるドキュメンタリー映画「Sahra Halgan Retours to Somaliland (2015年)」の上映後、音楽評論家サラーム海上氏をゲストにサハラ・ハルガン・トリオを迎えての唄を交えてのトークイベント(日仏同時通訳あり)を開催いたします。
——————————————————————————
TOKYO スキヤキトーキョー2016」
8月30日(火)渋谷WWW
開演19:30(開場18:30)
VAUDOU GAME
ヴォードゥー・ゲーム(トーゴ/フランス)
SAHRA HALGAN TRIO
サハラ・ハルガン・トリオ(ソマリランド/フランス)
DAMILY
ダミリー(マダガスカル)

詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.sukiyakitokyo.com
——————————————————————————
『スキヤキ・ミーツ・ザ・ワルド 2016』
2016年8月24日 (水) – スキヤキ名古屋、Tokuzo, 名古屋
2016年8月27日 (土) – スキヤキ・ミーツ・ザ・ワルド, 南砺
詳細はこちら
2016年9月3日 (土) – スキヤキ沖縄, 桜坂劇場, 沖縄
詳細はこちら
——————————————————————————

 

関連記事

no image

独裁者列伝

いわき市にいるとき、コンビニで『東日本大震災 レンズが震えた 世界のフォトグラファーの決定版写真集

記事を読む

no image

三沢光晴DVD-BOX

10月上旬のバングラ行きまでに片付けなければいけない仕事が山ほどあるが、 そんなときにかぎって、三

記事を読む

no image

声が出ない!

たぶん風邪だと思うのだが、 昨日の晩から声が妙にガラガラになり、 今日にいたっては朝からまったく声が

記事を読む

no image

きっと名人

金曜日の晩に飲みすぎ、土曜日は夕方まで倒れていた。 気持ちわるいまま、なかのゼロホールに行き、柳家三

記事を読む

no image

見知らぬ超名作

 日頃から世間とのタイムラグというかズレを感じているが、「フラガール」には本当に驚かされた。 「フ

記事を読む

no image

2007年に読んだ本ベスト10(小説部門)

恒例(といっても2回目か)の「今年読んだ本ベストテン」である。 自分が読んだということだから、今年出

記事を読む

no image

「イエティは現実だ」

長らく待っていたブータン行きがやっと決定した。 来週の14日(水)に出発となった。 期間は約一ヵ月半

記事を読む

no image

寿司と酒

久しぶりにスーダンの盲人留学生アブディンと会い、 珍しくイスラムの話など真面目な話をしたが、そのあと

記事を読む

『アヘン王国潜入記』ほか4点が電子書籍化

今ツイッターを見たら、私の本が4冊、電子書籍として紀伊國屋電子書籍ストアで販売開始されたというツ

記事を読む

辺境ドトールで大宴会

土曜日、仕事場である「辺境ドトール」にて受賞祝賀パーティが行われた。 ドトールの常連である高級

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

    • 今まで野村監督に特に興味がなかったんですが、加藤さんの本を読んで、すごく好きになりました。人間味にあふれた策士というところ、でも言うことは決して奇をてらわないとか。あと、やっぱりサッチー、スゴい(笑) https://t.co/FrRQVs2IX8 ReplyRetweetFavorite
    • あ、そうだったんですね。名監督の知られざる一面を描いているし、著者ご本人の青春記風でもあり、『嫌われた監督』を彷彿させました。落合夫人とサッチー夫人もよく似てるし(笑)いや、面白かったです。 https://t.co/66kmDl74FN ReplyRetweetFavorite
    • 先月から自分の単行本原稿が佳境に入り、読書が全くできなくなっていた。他人の文章が頭に入らない。なんだけど、今日一息ついたあとで、なぜか加藤弘士著『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)を一気読みしてしまった。あまりにも自分の仕事と関係がなかったのがよかったのかも。 ReplyRetweetFavorite
    • 単行本を一冊書くのはエベレスト登山にも似ている。頂上に近づけば近づくほど一歩進むのが辛くなる。でもようやく『イラク水滸伝』本文の最終稿を書き終えた。あとはエピローグと参考文献、写真のセレクト、地図の作成、ゲラ校正、専門家への確認……頂上までまだけっこうあるな…。 ReplyRetweetFavorite
    • 文庫1位が久生十蘭!そそられる!! https://t.co/OWK4Bvakwo ReplyRetweetFavorite
    • RT : 本当に良かった。 傍聴していた知人によれば、「著しく正義に反する」という強い表現で無罪が言い渡たされたとのこと。つまり、リンさんの孤立出産での死産を罪に問うこと自体が正義に反するとの判断。 これを機に、日本に暮らす全ての女性の妊娠・出産・選択の… ReplyRetweetFavorite
    • RT : 崩れたとき生きるすべがなくなる。はずれたものを生息する余地をとっておくこと。中心と周縁。クリエイティビティはいかにして生まれるのかについては、秩序にあわない変なものを見つけ、探しにいく勇気、変なものをみつける臭覚のことなど。理系文系の枠を超… ReplyRetweetFavorite
  • 2023年3月
    « 3月    
     12345
    6789101112
    13141516171819
    20212223242526
    2728293031  
PAGE TOP ↑