*

新キャラ・パープル旬子の『捨てる女』登場!

公開日: : 高野秀行の【非】日常模様

2013.11.19suteru
あと二時間ほどで家を出る。旅の準備はだいたい終わったと思ったら、大事なことがまだだった。
内澤旬子『捨てる女』(本の雑誌社)を紹介してなかったじゃないか!

これは本当に面白い本だった。
数日前、寝る前に読み出したら止まらなくなり、一気に読み干してしまった。
その間、本を手から離したのは一度お茶を入れに立ち上がったときだけで、トイレにも行かなかった。
早く寝なきゃいけなかったのに。
「巻を置くを能わず」とはまさにこのことだ。

内澤さんはすでに『世界屠畜紀行』や『飼い喰い』で体験ルポの名手として
『身体のいいなり』で今までにないエッセイの書き手として知られているが、
まだ全貌を明らかにしていなかった。

ブログを読んだり、実際に会って話したことがあったりすればわかるのだが、
内澤さんは「おめえ、死ねっつーの!」という毒舌と、「ううう」と悶え嘆く自虐の人でもある。
今までのルポやエッセイが「白ジュンコ」で実物が「黒ジュンコ」と書きかけたけどそうでもなくて、
従来のルポは白ジュンコ、『身体のいいなり』や『この人を見よ』などは黒ではなくグレー・ジュンコだろう。
で、実物はというと、色で要ったら「パープル・ジュンコ」という感じがする。
強烈で暗めだけど華やかなのだ。

まだ見ぬパープル・ジュンコがついに全開になったのがこの『捨てる女』だ。
四十年以上溜め込んだものを片っ端から捨てていく。
莫大な収集ブツともゴミとも宝物ともつかないものをこれでもかと捨てていく。
しかし本当は何を捨てているのかというと、彼女は「過去」を捨てているのだ。
どさくさに紛れて夫も捨てているし。

自分の過去だけじゃなく、豚を飼った千葉県の廃屋に残っていた他人のモノ(過去)まで捨てていて、
途中から何がなんだかわけがわからなくなるのだが、それでもゆるやかな物語の流れができており、
ひじょうに心地よく読めてしまう。ある意味、デトックス効果があるというか。
そして、読後感もすごくいい。
「断捨離でスッキリ」みたいに浅くない。初秋の風のように、しみじみして爽やか。
それにしても、性転換した能町みね子さんと秘所を見せ合、互いに「へえ、こうなってんだ!」と感心する場面がこれまたさり気なく書かれたのにはぶっ飛んだ。

         ☆           ☆            ☆

てなわけで、やっと出発の準備整いました。
みなさん行って参ります!

関連記事

no image

自虐読書の旅

地震以降、朝ジョギングに行くと、びっくりするほど人がいない。 私が走る玉川上水沿いは、いつもはジョギ

記事を読む

no image

まんせーむーのうあんあん

「本の雑誌」で今度は、大槻ケンヂ氏と「マンセームーノー対談」。 オーケン博士の分析によれば、人は誰で

記事を読む

no image

セーターの男

メモリークエストを更新した。 面談は2回目、「ペルーに忘れてきたセーターを探してほしい」という トン

記事を読む

no image

読んではいけない

仕事をしなければいけないのに イエス小池『漫画家アシスタント物語』(マガジン・マガジン) なんて奇

記事を読む

no image

ずいぶん前の話だけど

ずいぶん前の話だけど、早大探検部の先輩・西木正明の『流木』(徳間文庫)という本の「解説」を頼まれて、

記事を読む

no image

ヤノマミ読書VSサバイバル登山家

忙しくてなかなかブログの更新ができなかった。 そうそう、本の雑誌3月号の「冒険本・探検本特集」でと

記事を読む

no image

知られざる名作がまた一つ

桜栄寿三『蝸牛の鳴く山』(藤森書店)を読む。 先日お会いした作家の古処誠二さんが「すごくいい本です

記事を読む

no image

2011年のベスト本はもう決まった!

数日前、増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』(新潮社)を読了した。 これほど面白くて

記事を読む

no image

ニュー蔵前本

次回の「辺境読書」では、蔵前仁一『わけいっても、わけいっても、インド』(旅行人)を 紹介することに

記事を読む

no image

立松和平とドンガラ

立松和平氏が亡くなったというニュースを見て驚いている。 というのは、一昨日、たいへん久しぶりにその

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

no image
イベント&講演会、テレビ・ラジオ出演などのご依頼について

最近、イベントや講演会、文化講座あるいはテレビ・ラジオ出演などの依頼が

ソマリランドの歌姫、来日!

昨年11月に、なんとソマリランド人の女性歌手のCDが日本でリリ

『未来国家ブータン』文庫はちとちがいます

6月23日頃、『未来国家ブータン』が集英社文庫から発売される。

室町クレージージャーニー

昨夜、私が出演したTBS「クレイジージャーニー」では、ソマリ人の極

次のクレイジージャーニーはこの人だ!

世の中には、「すごくユニークで面白いんだけど、いったい何をしている

→もっと見る

  • 2017年12月
    « 3月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031
PAGE TOP ↑