天国と地獄

昨日の新聞を読んで非常にハッピーなエントリーをしてから
何気なくリンク先のマレーシア英字新聞The Starのサイトを閲覧していると、
悲しい続報があった。
一つの事件で天国から地獄に突き落とされた気分だ。


ご機嫌な気分で書いたエントリーがこちら、
『生き抜ける…という証拠を積み上げる』
人によっては、そういうことを自慢げに語るのが鼻もちならないのだそうだが、
私は色々な危険や危機にあっても生き抜いていける自信がある。
武術の達人でもないし、軍隊で特殊な訓練を受けたわけでもない。
体が人一倍丈夫なわけでも、サバイバルの知識を人一倍持っているわけでもない。
特別でもなんでもない市井の人々が、特殊な状況を潜り抜けて生き残ったという話を
聞くたびに、「こんな目に遭っても絶対に死ぬわけではないんだ」という希望を一つ一つ
積み上げて行っているのである。
人間と言うのは強いもので、飛行機事故でも、地震でも、建物の倒壊でも
1人か2人は奇跡のように生き残ることがある。
自分はきっとその1人になる、と思えるかどうか、生きることへの執着と、
きっと生き残れるはずだという希望があるかどうか、
そこに生死の岐路があるのだと信じている。
以前このブログで書いたような気がするが、10年ほど前、子供を襲っているトラを
父親が撃退したという新聞記事を読んで、よしトラになら勝つこともありうる
(たとえ0.1%の確率でも)と大きな勇気をもらったのだが、
今日のThe Star紙の記事はそれをさらに増幅してくれる素晴らしいものだった。
Orang asli fights off tiger with rock-Attack leaves gaping wound on Yok Meneh’s back
(オランアスリ(先住民族の総称)石でトラを撃退-トラの攻撃によりヨクメナーさんは背中に重傷)
[イポー支局]先住民族のヨクメナーさんはジャングルでナタマメなど商品価値のある植物採集を
して生計を立てている。いつもの採集行はトラの襲撃により恐ろしいものとなった。
しかし男47歳は簡単にあきらめなかった。手近にあった石を武器に戦い、ついにトラを撃退する
ことに成功したのだ。
トラの襲撃は、メナーさんの背中に長さ15.2センチ深さ10センチの裂傷を残した。
トロインタン病院のベッドでメナーさんは語る
「何年もジャングルに入っているけど、トラに襲われたのは初めてです」
彼の襲われたジャングルはイポーから80キロほど離れたスンカイのラス村の彼の家近くだ。
「ナタマメを集めるのに集中していてトラが後ろから忍び寄って来た*のに気がつかなかった」
トラは彼に襲いかかり、押し倒すまで沈黙を守っていた。
「それから急にうなり始めたのです。私はたった一人であり、誰も助けてくれないのだと
気がつくまで大声で助けを呼びました。」
「自分でなんとかするしかないと気がついたとき、なんでもいいから手に触ったものを掴み上げたのです。
その時掴んだ石でトラの頭を何度も何度も殴りつけました。トラが逃げ出すまで。」
勇気あふれるオランアスリは傷ついた体を引きずって1.6Km離れた自分の家まで帰りつきました。
血だらけで泥だらけの夫を見た妻は、近くで働くアブラヤシ農園従事者に助けを求めて
夫を近くの診療所へ運びました。
その後診療所では手に負えない重症だということで、トロインタン病院に搬送されたのです。
トラの襲撃を受けてジャングルに入るのはやめるか?と聞かれたメナーさんは、
家族を養う手段はこれだけだから今後も入るしかないと答えました。
(抄訳 トシ)
*ナタマメ(Petai)は20メートルほどの木の枝になる豆で採集は通常木に登って行う。
原文は “I was so engrossed in collecting petai that I did not notice
the tiger had crept up behind me”とあり、この”crept up”を這い登ると訳すか迷った。
しかし樹上で枝先のナタマメを集めている状態で、トラが登ってきて襲いかかるというのはあまりにも
現実的でないということで、地上での出来ごととした。
間違いだったらご指摘を。
メナーさんの写真を見ていただきたい。
47歳(寅年か?)という年齢が嘘ではないか?と思うぐらい若々しい男性だ。
おそらく160�ほどの小柄な男性だと思う。
彼のすごいところは、背後から襲われ押さえつけられたという絶対不利な状況から逆転したということ。
首筋や喉を一噛みされていればそこで一巻の終わりだっただろう。
精神も肉体もすばらしい強さだと思う。
メナーさん万歳!そして私に勇気を与えてくれてありがとう。
そして悲しい続報がこちら
『襲撃地点の近くでトラの死体みつかる』
土曜日にヨクメナーさんを襲ったとみられるトラの死体が現場から100mほど離れた森林で発見された。
銃と吹き矢による傷が見られ、左前足の先端が失われていた。
野生生物局によると、密猟者の罠から逃れる際に失ったものだと思われる。
オスのトラで体長1.8m、体重120キロ。
傷の痛みからヨクメナーさんを襲ったものとみられる。
ヨクメナーさんは悪くないし、すごいことに変わりはないけど、
今度はトラが気の毒になって来た…

“天国と地獄” への2件の返信

  1. AGENT: Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.1; en-US) AppleWebKit/532.5 (KHTML, like Gecko) Chrome/4.0.249.78 Safari/532.5
    そうですか。
    野生動物は手負いが1番怖い、と言いますが、
    その虎はまさにそんな状態だったんですね。
    ヨクメナーさんが、生きるために虎を撃退したのは、
    当然の行為だし、生還出来たのは本当に素晴らしいことです。
    ただ、虎が人を襲うようになってしまった背景を考えると、
    複雑な気持ちになりますね。

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; GTB6.4; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)
    NONOさん コメントありがとうございます。
    マレーシアでよくあるトラの罠は
    トラがかかった時、近くに隠れた密猟者が撃ち殺すタイプだ、
    ということを身をもって体験しているだけに(苦笑)、
    このトラに必要以上に感情移入してしまいました。
    銃創と吹き矢の傷もあったそうです。
    毒が回ったのかもしれませんが、なんだか自分が
    撃たれたような気分になっています。
    精神的に弱いですね。

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