ブータンという国が気になるわけ

この前のエントリーで生物資源探索をするものにとって
ブータンがいかに魅力的かの一端を書いてみた。
要約すると『自然環境と伝統的知識が両方いい状態で残っていること』になる。
今回は生物資源探索に関係ない人にとってもブータンは魅力的なはずだ、
ということを書いてみたいと思う。
『密林ジャーナル』の趣旨とはちょっとはずれるがご勘弁を。


 
緯度は台湾と同じくらい、つまり低地なら亜熱帯に属するが
首都ティンプーは標高が2500メートルもあり、真冬の1月は朝晩マイナスを記録する。
しかし乾燥地帯ということもあり、雲のない日中の日差しはかなり強く、
気温は25℃程度と日本の5月位の感じである。
日陰に入らない限り半袖でも大丈夫だ。
九州程度の大きさで横に広がった国土の南北はせまい。
海抜200mから7500mにかけての大きな標高差は、
そのまま南から北に向っての急な登り傾斜となっている。

ブータン一番の輸出品目はこの傾斜を利用した水力発電による電気だ。
これをインドに売って貴重な外貨を獲得している。
国民の90%がなんらかの形で農業に従事しているこの国では
親戚や友人同士で作物のやりとりをすることが多いので、市場を通して
流通する財が少なく、実態経済をしっかりと反映していないそうだ。
歴史的にも干ばつや飢饉などはなく、基本的に食生活は安定している。
エマダツィ
食卓に必ず上る唐辛子をチーズで和えた料理
赤米
次に衣料品であるが、国が半強制しているという公務員の民族衣装だが、
こざっぱり、それでいてしっかりとした作りで上質感もある素敵なものだ。
複数の衣装をローテーションで着ることが多いそうだが、
機械織の廉価品と手織りの高級品、どちらもなかなかの品質である。
遊牧民の子供たち
道端で露店を開きながら遊んでいた子供たちも普段着として民族衣装を着ていた。
しかし驚かされるのはやはり住居の素晴らしさだ。
基礎部分は土を突き固めて作るのだそうだが、重厚感がある。
建物によっては外装を石組にしているところもある。
外装は真っ白な塗り壁、そしてしっかりとした材木を利用した
窓や扉があつらえられている。
また色鮮やかな伝統的装飾が、ほとんどの家の軒に見られる。
一階は土間に囲炉裏が切られ。二階は広々した板敷の間、
ほとんどが仏間として使われるらしい。
そして屋根裏は作物を干すために壁が作られていない。
すべてが堅固で何やら格式も感じられる。
トイレは外に個別のものが建てられ、台所が別棟の家庭も多いそうだ。
農家
右奥に見えるのがトイレ
上とは別の民家
この2軒の家が特別でない証拠に次の二枚の写真を載せよう。


聞くところによると、チベット仏教を国教とするブータンでは
仏教寺院の維持が非常にきちんと行われており、そのことで伝統的な
大工の収入が確保されているため、後継者も多く、技術も伝承されやすい。
そのことから一般の家にもしっかりとしたブータン様式の建築や
装飾を見ることができるのだ。
2x4やら新建材などが普及した結果、伝統的な日本建築の家を建てる
ことができなくなってしまった日本の住宅事情がひどくさびしく感じられる。
ここまでの記述でわかるように、ブータンという国は衣食住が
かなりしっかりと安定している国のようだ。
もちろん贅沢に慣れた人の目から見れば、貧弱なのかもしれないが
必要十分という感じがする。
これに加えて、医療と教育は無料なのだそうだ。
必要なものだけがしっかりと提供されている国。
そんな印象を強く持った。

“ブータンという国が気になるわけ” への2件の返信

  1. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; GTB5; .NET CLR 1.1.4322)
    ブータン紀行文大変興味があります。あのどてら風民族衣裳も日本人のふるさと?と思ってしまいます。それに以前ブータンの人がソバを食べたり、糸引き納豆を食べるとTV番組で見た記憶があります。チーズとトウガラシの和え物ってどんなお味でした?
    チーズを牛かヤクの乳で作るのですか?ビルマの食文化には牛乳の影が極めて薄いのです。チベットから南下してくる途中、何処で落としてきたのかと
    不思議なのですが。最近はヨーグルトも作るようになりましたが。近年のことです。

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; GTB5; .NET CLR 2.0.50727)
    D先生 短い滞在でしたが、いろいろ考えさせられました。
    次は5月ぐらいに訪問することになると思いますが
    春先はシャクナゲの花が満開できれいだそうで、これも楽しみです。
    チーズとトウガラシのあえ物は、なんとも表現しづらい味でしたが、
    基本的にはトウガラシの辛みをチーズで抑える
    という趣旨のようで、かなり辛さが勝っているものでしたね。
    私は幸いマレーシアでチリには慣れているので大丈夫でしたが、
    苦手な外国人は多いようです。

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