アリの事ともう1つ

熱帯ジャングルに生息するアリの大群というのを
テレビや映画などでご覧になった方も多いと思う。
さっさと逃げなければ牛でさえ骨だけにしてしまう恐ろしいアリだ。
トシが主戦場とする東南アジアのジャングルは
有名なアマゾン産のアリほど、強力なものはいないようだが、
大小さまざまなアリがいることでは遜色ない。


  
  
ジャングル初心者がまず驚かされるのは
ギガスオオアリというアリの大きさだろう。
体長3センチ。どこといって特徴のある
形状ではないが、とにかくデカイ。
幸いなことに群れをなして襲ってくるという
ような凶暴な性質はないようで、林床を少数で
うろうろしている所を見かける程度だ。
これに対して、ちょっと勘弁してもらいたいのが
赤サビ色をした体長1センチ程度のアリである。
(おそらく名前はテトラポネラだと思う)
別にこちらが何もしなくても
連中の活動範囲にいると噛んでくる凶暴な奴だ。
噛まれると飛び上がるほど痛い。
噛み付いた所に蟻酸をかけるなどと言われているが
実際「びしっ」と音のしそうな痛さだ。
噛まれないとわからないかなー。
おまけにこいつらは密集して活動しているので
被害は常に複数箇所に及ぶ。
木の枝などについている奴らが、首筋に飛び込んで来る。
足元にいる連中が靴から上がってくる。
なぜかやたらと凶暴で、こんなのが
寝袋の中に潜り込んで来たりしたら
たまったものではない。
倒木をまたごうとして、木の反対側を小さなアリが
びっしりと行列を作って移動する姿にぎょっとすることも
しばしばある。
少し離れてみるとアリの群れによる模様が、木目のように
見えてしまうくらいだ。
ごくごく小さなアリが規則正しく移動しているので、
動きが最小限で、木の表面が、ジャングルの木漏れ日で
ちらちらしている程度にしか認識出来ないのだ。
そんなことを書いていて、
トシがはじめてガイドを雇って山に入った時のことを思い出した。
ジャングルの入口までは、油やしのプランテーション。
道幅2メートルほどの作業用の道をガイド氏と私は軽快に進んでいた。
すると、前方に細い丸太が横たわっているのが見える。
直径15センチか20センチ程度の杭のような材木である。
2mほどに近づくと、表面の模様がやはりちらちらとしている。
例によって丸太の表面をアリの群れが移動しているようだった。
丸太をまたごうとしたトシを見て、
後ろにいたガイド氏が突然叫び声を上げた。
何が問題なのかわからず、ギョッとしていると、
足元の丸太が道わきの藪に引きずられて行くではないか!
トシが丸太だと思っていたのは、実は巨大なニシキヘビで、
アリの作る模様に見えたのは、ニシキヘビ自身の模様であった。
丸太のような太さとは、不釣合いなほどほっそりした
しっぽを最後にニシキヘビは藪に消えていったが、ガイド氏は怖じ気づいて
先へ進むことを拒むのだった。

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