座右の掌編(2作)

前回のエントリーで座右の書として「竜馬が行く」を挙げた。
本当に愛してやまない本(全8巻)なのだが、もう一つ挙げておくべき本というか
作品がある。(実際は2冊にまたがる、二つの作品)
「ドランカー <酔いどれ>」(沢木耕太郎著「敗れざる者たち」文春文庫)と
その続編とでも言うべき作品「コホーネス <肝っ玉>」(「王の闇」文芸春秋)である。


 
この二作はジュニアミドル級*世界チャンピオンの輪島功一に密着して書いた
スポーツドキュメンタリーの傑作として読まれた方も多いだろうと思う。
そしてこの2作を読めば、テレビでへらへらしながらくだらない冗談を言っている
輪島功一が実はどんなにすごい男かに圧倒されてしまうはずだ。
著者の沢木耕太郎が輪島にどんどん魅了されて行く様が、そして読者ともども
動的なカタルシスを得るまでが描かれるのが「ドランカー <酔いどれ>」。
その輪島の無残な敗北に対する疑問が解き明かされ、さらに輪島功一という男に
心底感動する静かなカタルシスを得ることができるのが「コホーネス <肝っ玉>」である。
最近よく見られるチンピラ的な挑発行為や発言をしなくても
本当に強い男はどんな男かがよーくわかる作品だ。
だまされたと思って読んでみてほしい。
「輪島功一」を見る目が変わること請け合いである。
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* ちなみに輪島功一の階級、ジュニアミドル級(現在のスーパーウェルター級)は
69.853kg以下という身長170センチの輪島功一には信じられないほど重い階級であり、
これまでの日本の世界チャンピオンのほとんどがバンタム級53.524kg以下であることを
考えると、非常に特異なことだと思う。
しかも防衛回数6回、2度の防衛失敗後も2度返り咲いている。
輪島より重い階級の世界チャンピオンはミドル級72.575kg以下(これもすごい)の竹原慎二
(身長186センチ)しかいない。(残念ながら一度も防衛はしていないが、それでもすごい)
こわもてのガッツ石松(身長172センチ)が三階級下のライト級61.235kgということでも
輪島功一のジュニアミドル級チャンピオンという特異さが理解できるだろう。

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