違法伐採の統計と実感の微妙な誤差

友人の運営しているブログ『サステナラボ』(リンクを参照)は
生物資源の持続的利用について非常に示唆に富んだ記事が多く
いつも感心している。
ネタ探しだけでも大変だろうにそれを独自の調査や視点で
一篇のジャーナルに仕上げているのがすごい。しかもほぼ毎日更新!
皆さんも是非読んでみて下さい。びっくりするから。
11月17日づけの違法伐採の経済的損失という記事では
違法伐採を野放しにしておくことで被る経済的損失について
書かれている。これは興味しんしんである。
 


以前にも書いているかと思うが、違法伐採というのは
確信犯的犯罪行為であり、初期投資の大きさやそのリターンの
大きさと確実性からいって、森林内犯罪(造語)の横綱中の横綱である。
密漁や密猟なんてのは、人によっては何が悪いのかよくわからず
やっている人が結構いたりするので、それはそれで困りものだが、
違法伐採は違う。
そして、少なくとも持続可能な手法でとか、選択伐採で森林に対する
ダメージを最低限にして、などという観点は皆無である。
Hit & Run。さっと伐採してさっと逃げる。効率命なのだ。
違法伐採を厳しく取り締まるべき理由は主にここにある。
ところが、この違法伐採には現地の住民がパートタイマーとしてかりだされており
現金収入の道でもあるのが、ややこしい。
サステナラボのこの記事では世界銀行の発表を原典として
違法伐採により、政府の租税収入が6000億円の減収であるとあり、
ちょいとわかりづらいが、おそらく
『合法的な伐採をした場合に期待できる租税収入が違法伐採によって得られなくなる』
という意味の減収のようだ。
これによって、政府の規制強化を促しているのだろう。
また、違法伐採の割合であるが、

 林業が重要な国で見てみると、なんと2/3以上の国々では、50%以上が違法伐採なのだそうです! ちなみに日本と関係が深そうな、アジアなどの国々における、違法伐採の推定値は以下の通りです。
 カンボジア 90%
 インドネシア 70−80%
 マレーシア 最大35%
 ミャンマー 50%
 パプアニューギニア 70%
 極東ロシア 50%
 タイ 40%
 ベトナム 20−40%

 
とのことで、マレーシアが比較的少なくてほっとしたが、
よく考えなくてはいけないのは、一体どの程度の伐採が
違法・合法合わせて総量として行われているか、という点ではないだろうか?
例えばベトナムなどは 99年ごろ私が北西部の森林地帯(と言われた)を
旅行したときにはそもそも森なぞほとんどなかった。
どんな急斜面でも、キャッサバや食用カンナ、とうもろこしなどの
商品作物が植えられていた。
この時の印象を元に書くと、
ベトナムの総量としての伐採量は、データなしのあてずっぽだが、
それほど大きくないのではないか?
それに対してインドネシアとパプアニューギニアはこの違法伐採の
割合以上に総伐採量で驚かされること請け合いである。
ちなみに蛇足だが、トシの理解では
パプアニューギニアはほとんどの土地が個人所有になっている国で、
国有林のようなものは国立公園などを除いて非常に少ないので
伐採によって近隣諸国が得られるような租税収入はほとんどないように思う。
それよりまず70%を除いた30%の合法的伐採の根拠というのは
どんなものなのかな?という疑問はある。
合法にしろ違法にしろ伐採を少なくするためには利益獲得の代替案を
しっかり出す必要がある、という主張に全く変わりはない。
ビルゲイツ級の億万長者(古いね)が何人かで、伐採を一切しないと
新たに決定した森林1haあたり10万円を管轄者に支給するとか言うスキームしか
ないのかもしれない。それと購入サイドの取り締まり強化である。
ちなみに、最近木材は中東向けに輸出されることが多いのだそうだ。
いくら日本が取り締まり強化しても、とちょっと悲観的になる事実だ。
中東というのは環境問題などには基本的に理解が薄そうな地域ではある。
緑がないことが前提の国だから、というのはトシの勝手な想像であるが
当地マレーシアで見かける我々の社会モラルとは明らかに異なる彼らの社会モラルを
見るにつけ、正直相当難しいだろうなと思ってしまうのだ。

“違法伐採の統計と実感の微妙な誤差” への23件の返信

  1. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
     ちと、まじめなお話にも反応しようと努力しています。(苦笑)
     いま、手元にボルネオ島に限りますが、熱帯雨林と動物保護活動している日本のNPOと企業リストがあるのですが、11団体ぐらいあって素人目には少なからぬ数だとおもうのですが。やはり、そういった活動は根本的な解決にはつながらないのでしょうか。
     あと、サラワクで急進的な環境保護活動を行って、政府から睨まれたジョルダノ・ブルーノという人がいることを耳にしたことがあるのですが、環境保護に一石を投じることができたのでしょうか。
     なんか質疑応答みたいな感じの反応しかできなくて、申し訳ないです。

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    ネギシさん どうもありがとうございます。
    こういう質問は大歓迎です。
    私自身はその活動団体のリストを持っていませんので
    各論的な話ができないのですが、総論的に言いますと
    根本的な解決には繋がりません。
    また急進的な活動は、それを受ける政府だけでなく
    一般にもかなりなアレルギー反応を引き起こします。
    グリーンピースの活動など、活動の目的には
    賛成できても手法にどうしてもなじめないものがあります。
    僕はマイナスだと思いますね。
    サステナラボで示されているような具体的数字などで
    損得をきちんと説得していくような姿勢と
    議論が喧嘩にならないような大人の手法が絶対に必要なはずです。
    個人的には交渉相手に儲けさせることが重要だと思います。
    人は利に動く、というのはかなりな部分で真実です。
    利を説きながら心は熱くというのがいいんでしょうね。

  3. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322)
    ちょっと言葉足らずだったので補足します。
    ある種のNPOなどの活動は根本的な解決には繋がりませんが
    その活動が無意味であるという意味ではありません。
    地道な活動はとても大事だということに異論もないです。
    ただ、NPOの一部には自分は正しいことをやっているのに
    賛同してくれない一般民衆は馬鹿だというような
    思い上がった輩がいることも残念ながら事実です。
    この姿勢では絶対に賛同者は増えないと思います。
    むしろ環境にとって彼らは有害なのではないか、
    と思うこともあります。

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