音の無い恐怖(再投稿)

 *2005年2月20日分の再投稿です。
ジャングルにおける恐怖の対象は何もゾウばかりではない。
今度は小さな生き物で恐ろしいものについて書いてみよう。
そう、皆さんご存じのヒルである。


マラリアやデング熱を媒介する蚊の方が恐ろしいのではないか?という疑問もあるだろう。確かにその通りだ。しかしジャングルの奥深くに入ると意外なほどに蚊は少なく、恐怖を感じることは少ない。ということで蚊についての話は別の機会に譲るとして、ヒルに話を戻そう。
東南アジアの熱帯ジャングルに棲息するヒルは大部分が長さ3-5cm、血を吸って満腹状態にある時以外は爪楊枝程度の太さで、尺取り虫を連想していただければ間違いない。この細さがくせ者で、ちょっとした隙間からどんどん侵入して来る。例えばソックス。普通のソックスは甲の部分、かかとの部分、足の裏の部分、そして足首から上の部分が組み合わされてソックスの形を成している(縫製方法は違うのかもしれないが)したがって、くるぶしの直ぐ下のあたりには3方向あるいは4方向に引っ張られることで縫い目が広がっている部分が出来る。この穴はヒルにとって十分な大きさである。
ヒルは人の皮膚に取り付くと痛みを全く感じさせずに食い付く。そして血液を凝固させない酵素を分泌しつつ細々流れる血液を体内に満たしていくのである。満腹状態のヒルは体組織が膨張したせいか、心なしかつやつやと黒光りしたナメクジのように体型を変え、静かに皮膚から体を離すのである。キャンプ地に到着してソックスを脱ぐと満腹状態のヒルがころりと転がり出すこともしばしばだ。
痛くもなく、伝染病の媒介もない、ヒルがなぜ恐怖の対象となるかというと、襲撃の規模だろう。目の無い小さな生き物が尺取り虫のような動きで音もなく自分に向かってくるのは1,2匹ならユーモラスと笑っていられるが、これが数十匹、数百匹となると話は違ってくる。
山を軽く見て、細身のジーンズで入った白人女性が裾をまくろうとしたところ、片足だけ、ひっかかるようで、どうしても上がらない。藪に入ってジーンズをおろしてみて、悲鳴を上げて気絶してしまった。慌てて駆けつけた友人が見たのはジーンズを下げた状態で倒れた女性のあられもない姿だったが、尋常でないのはふくらはぎから太股にかけて肌が見えないくらいびっしり取り付いたヒルだったという。
こんな目には死んでも遭いたくないものだ。
皆さんもきっと同意してくれるだろう。

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“音の無い恐怖(再投稿)” への39件の返信

  1. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    軟体動物がダメなので、毒が無くても見るだけで鳥肌ものです

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