密林の夜と昼の一番の違いはなんだろう。
密林を徘徊していると必然的にアップダウンを繰り返す。
そのたびに異なる虫の声、鳥の声、蛙の声などが聞こえてくる。
峠を越えるとほえ猿の叫び声が遠くに響いてきた。
変わった植物が現れ、少しずつ異なる景観を形作っていく。
そんな時のジャングルは、ただただ無限の広さを感じさせてくれる。
『果てしない広さ』これがジャングルのイメージだ。
一方、日が暮れて、漆黒の闇があたりを覆い尽くすと
ジャングルは、自分の存在を中心に一気に凝縮してしまう。
無限の広さに展開していた生き物も全てが自分の周りに
集まってくるような気がするものだ。
湯を沸かした後の小さなたき火の明かりが届く限界点の
直ぐ外に、トラなどの肉食獣が息をひそめているように思える。
どこかに緊張感を持ちながら、昼間の疲れから眠りに落ちていくとき
自分が「生と死の狭間」を越えていくような錯覚に襲われる。
「生き物の密度の濃い空間」これが夜のジャングルのイメージだ。
2つの全く異なるジャングルのイメージを繋ぐのは「蝉」である。
海辺のジャングル
世界中どこでも、大きな都市には外の世界と繋がる
なんらかの玄関口があり、そこを中心に開けていくものだ。
近代での玄関口は間違いなく港だろう。
海あるいは大河で複数の外世界と繋がっている。
内陸部では、大きな街道ということになるのだろうが、
やはり、世界に繋がるラインの豊富さは港にはかなわない。
そんなこともあって、世界の主要都市のかなりの数は港湾都市だ。
これまでマレーシアあるいは周辺国の熱帯低地林や、高山のジャングルを
紹介してきたが、実は都市部からもっとも近いジャングルは、海岸線の
マングローブ林ではないかと気がついた。
熱帯ジャングルへ入ろう!−マレーシア篇−
ヒルといい、ゾウといい、ジャングルに恐怖感(あるいは嫌悪感)を抱かせる話ばかり書いてきた。
これでは『密林ジャーナル』を立ち上げた意味が無い。
言うまでも無く、ジャングルは、本当に素晴らしい場所なのだ。