ジャングルで恐ろしいことと言えば(1)

ジャングルで最も恐ろしいことは何か?
ゾウも恐ろしいし、ヒルの大群も恐ろしい、トラだって恐ろしい。
それらをおいて、頭に浮かぶことが2つある。


頭に浮かんだことの一つは倒木だ。それも倒れてしまった木ではなく、木が倒れること、である。
ダニの項で書いたが40m級の大木が何本も倒れているという光景、それは凄まじいの一語に尽きる。通る度に悩まされる骨伝導のダニもたしかに恐ろしいが、桁外れの集中豪雨で斜面が激流となり、地表が浸食されて土砂崩れと共に倒れ落ちる姿、あるいは荒れ狂う嵐に翻弄され、雨でゆるんだ根から、まさに引っこ抜かれる姿、どちらもさすがに(幸いにか)見たことがない。
熱帯の集中豪雨は1時間100mmなんてのはざらだ。そうなると斜面は全方位、鉄砲水のようで、立っていることはおろか、溺れる危険さえある。川沿いは別だが平坦な所にさえいれば、どんなに降水量が多くてもそれほど恐ろしくはないが、こういった豪雨の直前から中盤にかけては強風を伴うことが多い。これは怖い。熱帯の木は下枝がなく樹冠までまっすぐなものが多いのだが、4-60m級の巨木達が揺れていると、視覚的にもA級だが、きしみ音も尋常ではない。しかも足下の根が上体の揺れを伝えて振動を始める。これがさらに怖い。ジャングルというのは地面の方まで強風が吹き荒れるということは少ない。なので、大木のきしみや、地面の震動がよけいにはっきりと伝わってくるのである。尋常の神経を持つ人間なら、絶対に生きて帰れる気がしない。しかし、強風はじきに止み、あとは雨が静かに降り続くだけ….これはこれで、生きてて良かったという実感が沸く、すばらしき経験でもあるのだ。 それに較べて….(続く)      

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です