こういう人っているんだなー。ということ

10月10日からの1週間はあちこちで話をする機会があった。
前回のエントリーでも書いた上智大学のほかに、14日(火)には
久留米で開催されたバイオ関係の国際会議『第三回アジアバイオビジネスパートナーリング』
というイベントでも講演させてもらったし、16日(木)には横浜パシフィコ
で開催された日本で最も権威のあるバイオ関連イベント『バイオジャパン2008』でも
会社の紹介イベントで自社プレゼン(これは単なるセールス)を行った。
久留米のイベントは英語でプレゼンしたものを同時通訳が日本語に、バイオジャパンでは
逆に日本語のプレゼンを同時通訳が英語に訳してくれた。
多少専門用語の入るプレゼンの場合、必ず事前打ち合わせというのを行うのだが、
能力の高い人たちと仕事をするのはなかなか楽しいものである。
自分の能力まで上がったような錯覚を起こすくらいだ。
優れた同時通訳者というのは英会話の巧拙や発音の良し悪しだけではない、
高度なスキルを持っているので感心してしまうのだ。
偉そうなことを書いたが私の英語などはかなりいいかげんなもので、
正直なところ、人様を前にして披露するようなものではないのだが、
話の中身はそんなに悪くないはずだ、と必死で自分に言い聞かせながら恥をかいている。
言語はネイティブ並みに流暢に話せればいいかというとそうではなくて、やはり中身なのだと
思う。今回のノーベル賞の日本人受賞者たちの英語でのスピーチを聞くにつけ強く思う。
そういった意味では最悪の人に出会ってしまった。
英語の話ではない、話すべきことを持っていない、という意味でである。
バイオジャパンの会場でである。


ある国(地域)の産業振興公社に関係する外国人二人組がわれわれに商談を申し込んできた。
彼らは独自の研究技術を有していてそれを我々に導入しないか、と持ちかけてきた。
残念ながら当社が必要としている分野とは違うことを説明してお断りした。
すると二人は彼らの所属する大学が所有する生物資源のライブラリー(保存生物のこと)を
我々に委託して販売できないか打診してきた。
当社は生物資源採集国の妥当な機関から許可を得て採集した生物資源以外は扱わないという
ポリシーがあるので、このライブラリーの中身は大丈夫なのかどうかを確認した。
二人は正直に「すべてのサンプルにきちんと許可が下りているかはわからない」と答えてくれた。
よくあることなのだが、大学の先生たちは、学術研究の名のもとには何をしても
構わないと考えがちで、その趣旨で集められた資源は利用がはばかられるものが多いのだ。
その点彼らは素直に危険を認めてくれた上に、我々の断りを受け入れてくれたのである。
二人とは握手して別れたくらいだ。
そこへ、これまでの話し合いに一切参加していなかった人物(年配の日本人)が飛び込んできた。
曰く「私は日本の大手メーカーのXX支社で研究開発を長年担当し、その経験を買われてこの
産業振興公社の日本側責任者を仰せつかっている。さきほどの商談の趣旨はわからないが
(わかるわけがない、いなかったんだから)、産官学の連携はいまや日本国内だけで行う
時代ではない、国境を越えて進めなければ進歩はない、が持論である。」
さらに滔々と続く(あっけにとられる私たち)
「このことは日本の大手企業の経営者たちが集まる会議でも披瀝し大いに賛同を得たものだ。
あなたがたも、国内にとどまらずに海外との連携を考えないと時代に取り残されるよ。」
お説ごもっとも。しかし先ほどの商談は我々が海外との連携を嫌った故に決裂したのではなく、
彼らの提案したライブラリーに不安があったからだということを丁寧に説明した。
すると彼は
「彼らは同国の厳しいチェックをくぐり抜けて来ているのでそのような危険があるはずがない。」
と反論してきた。彼ら自身がこういった世界のすう勢を理解しておらず、危険性はあると
認めたことを説明した上で、もし危険性があることを把握した上で外部の第三者へ提供したり
提案したりするとコンプライアンス上大きな問題になることを告げる。
盗品を販売すると罪になる。盗品かもしれないという物を売るとどうなるかはしらないが
少なくともイメージ的には大きなマイナスだ。
そこで出たのがこのコメントだ。
「営業サイドはそこまで細かい内容を把握してはいられない。」…実感としてはわかる。
が、ことは製品の技術的詳細ではなく、違法性に関する問題であり、その疑いがあることを
当事者が認めたのだから、これを国や地域を代表してプロモートする側としては
「では早速調査をしてみます。」というのが出るべきコメントだろう。
食の安全性を脅かす事件が次々と起こり、自分の利益だけを求め、倫理観のない日本人が
こんなにたくさんいるんだなとは思っていたが、ある種同根の人を間近で見た。
すでに終わった話し合いに意味もなく割り込み、自分の自慢と主張だけを行い、
問題を指摘されると不機嫌になる。
こんな人を誤って代表にしてしまったこの国(地域)こそ不運だ。
こういう人ってやっぱりいるんだなーというのが偽らざる実感だ。

“こういう人っているんだなー。ということ” への4件の返信

  1. AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.3) Gecko/2008092414 Firefox/3.0.3
    別ジャンルながら、他国の出先機関のハズなのにその国に全く貢献していないばかりか、むしろ悪影響を及ぼしているのでは?と思われる日本の人々を相手にした経験から、思わずウラ読みをしてしまいます。
    実は、コンプライアンス云々って、民間企業よりも、こういった機関の日本側にこそ必要なのではとすら思います。

  2. AGENT: Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)
    渡さん その話よくわかります(笑)。
    渡さんの話の某国にとって、
    日本は絶対いいターゲットマーケットなんだから、
    もっといい人を代表にすれば、国益に繋がるのにね。
    あの人たちが日本側代表というのは某国の観光収入にとって
    大損失ですよね(笑)。

  3. AGENT: Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10.5; ja-JP-mac; rv:1.9.0.3) Gecko/2008092414 Firefox/3.0.3
    観光の他にも、経済損失もなかなかのもんです。
    (全ての機関、ほぼ似たようなもんなのか??(笑))

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