西南シルクロードは密林に消える

成田空港第二ターミナルの搭乗ゲート側-出国審査を終えた後のエリア-で
コミュータートレインに乗って移動した先には、三省堂の小さなお店がある。
20坪に満たないような小さなお店なので、文庫本の棚は非常に小さなものだが
どうやらここには高野秀行ファンがいるらしく、常に彼の集英社文庫の作品が
充実しており(売れないってこと?ではなさそう)嬉しく思っていた。


 
11月13日に彼の冒険ノンフィクション2大傑作のうちの一冊、
「西南シルクロードは密林に消える」が講談社から文庫化されたのだが
出国審査前のエリアに三軒ある他の書店では全く見かけなかったが
(売れたのかも?)、三省堂ではしっかり平積みになっていた。
氏の公式ブログ「ムベンベ」によると、文庫化にあたって20枚もの
原稿を追加したそうなので、単行本はすでに持っていたが購入することにした。
飛行機の中で読み始めると、ゆったり落ち着いた出だしから、ミャンマー入国あたりから
加速がかかり、一気にその世界に引きずり込まれる…その快感といったら。
すでに一度読んでいるにも関わらず、全く未知の世界に連れて行かれたような
読後感であった。こんなに面白かったっけ?というのが正直な感想。
この本も好きだが、個人的には「アヘン王国潜入記」のちょっと切ないところを
強く愛していたのだ、しかし…これは本当に甲乙つけがたい。
大変な大冒険にも関わらず、いつもの高野調でユーモアにあふれた文体で書かれているため
本当に大変なことをやっているような気がしない。
それは少しやばいのではないか?という気もした。
先日、早稲田祭で高野氏ら3人のOB作家を招いた「早稲田探検部50年史」という
DVDの上映会とトークショウが行われて、現役部員9人のうち、5人が高野氏の
本を読んで探検部に入部したという話を聞いたのだ。
「西南シルクロード」でも「アヘン王国」でもどちらでもいいが、あとがきを
よく読んでみるといい。高野氏を助けたり関わったゲリラ兵の決して少なくない
人が暗殺されたりしているのである。
読み口の良さに釣られて甘く見るとやけどをする。
そしてそのやけどは死に至るやけどかもしれないのだ。
甘美な死かもしれないが…
グレートジャーニーの探検家、関野 吉晴氏が解説(帯)でこう書いている。
「高野秀行の旅にはテレビカメラはついていけない」
最高の賛辞ではないか。ぜひ手にとっていただきたい。
*その高野氏が聞き手にまわった馬鹿野郎どものドロップアウト対談集「放っておいても明日は来る」(本の雑誌社)が発売になりました。
私も相棒の太郎氏(金澤聖太)も対談相手として登場します。
太郎氏は相当嫌がっていますので、私も読むのが楽しみです。
自分以外の人の話はまだ読んでいないのですよ(笑)。

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