ブータン滞在のこぼれ話(読書の話)。
5月13日バンコク発の便でブータンに入った。
前2回は1月(冬)、8月(夏)という時期だったので
初めての春のブータンである。
不思議なことにあまりの硬さに好評(不評?)だった
乾燥ヤクチーズが前二回と同じところで入手したにも関わらず、
全く硬くなかったのである。
なんてことはどうでもいいか…
今回、辺境作家の高野秀行氏のブータン辺境旅行からの帰還(首都への)に
合流して2日半ほどゆっくり話をする機会があった。
私は高野氏の冒険探検の面白さと同じくらい、独特の観察眼と比喩能力の
ユニークさに敬服しているのだが、やはり非常に面白い着眼点と比喩の面白さで
ブータン王国を(愛情も込めて)語ってくれた。
その面白さについては、彼がこれから書きあげる新作(きっと見たこともない
新ブータン論になるはず)に期待して待つのが正しい姿勢だろう。
さて、今回の滞在中にブータンではある噂が流れ、国民の一部(特に子供)が
不安を感じて学校へ出たがらないことを懸念して、内務大臣が公式にテレビで
噂を根も葉もないものとして否定するという事態があった。
この件で私と高野氏は意見がわかれたのだが、私はこの噂をある意図を持って
流されたものであると主張したのだ。
正しいと確信してのことではない。
実は子供のころから愛読している一冊の童話にこれにちょっとだけ
似たくだりがあるからなのだ。
『誰も知らない小さな国』(佐藤さとる著 村上勉絵 講談社青い鳥文庫刊)は
読書好きの母から薦められて小学校の時に読んだ本だが、大人になってからも
文庫で購入し、自分の子供に読ませるために購入した新書でまた読み、と
本当に何回も繰り返して読んできた愛読書の一つなのである。
最初から最後まで読ませ、そしてほっこりと嬉しくなるような本としては、この本と
『夏の扉』(R.ハインライン著 ハヤカワ文庫)の二つが思い浮かぶ。
『夏の扉』はともかくとして『誰も知らない小さな国』は童話ということもあって、
ある時期に読まないとその後の人生で出会う確率の低い本である。
しかし『バッテリー』(あさのあつこ著)が童話の枠を超えて素晴らしいということを
知る方はわかってくれると思う。
このブログを読んだことを縁だと思って、皆さんにもぜひこの本も読んでもらいたいと思う。
私がなぜブータンにこれほど心惹かれるのか、この本を思い出したことで
何かはっきりしたような気がする。
先入観なしで読むのが一番楽しいのだが、下にアマゾンの紹介文を引用することにする。
こぼしさまの話が伝わる小山は、ぼくのたいせつにしている、ひみつの場所だった。ある夏の日、ぼくはとうとう見た——小川を流れていく赤い運動づくの中で、小指ほどしかない小さな人たちが、ぼくに向かって、かわいい手をふっているのを!日本ではじめての本格的ファンタジーの傑作。
(シリーズで5冊ぐらいでていてどれも楽しいのだが、第一巻が白眉だと思う)