今週の月曜日(5月25日)からブータンの生物多様性センターの人たちが
当社の見学と共同研究の打ち合わせに来ていた。(今日帰国)
NHKの取材が二日も入ったりしてやはりブータンに対する興味は大きいと実感する。
さて、私はもうブータンを愛してしまっていて、
公平に判断できないところがあるので、以下のエピソードを
読者の皆様に判断をゆだねてしまおうと思うのである。
今回の打ち合わせに際して当社の中堅スタッフが、
『当社との共同研究で環境問題解決に貢献できる、という提案をしたいけどいいか?』
と聞いてきた。
彼はもともと新しい提案に関して非常に熱心なスタッフであるので
プレゼンの内容もプレゼンも彼に任せてみることにした。
プレゼンの内容は、細かく書けないが、『農薬』や『化学肥料』の過剰使用といった
国内規制の緩いほとんどの発展途上国の非常に大きな問題を抑制できる可能性がある、
という内容である。
マレーシアでも、高原野菜の産地であるキャメロンハイランドを流れる、見た目には
清流がマレーシア国内のどの川よりも汚染指数が高い、という形で顕在化している。
当社スタッフのプレゼンはいろいろなデータを集めたなかなか説得力のある
よいプレゼンであった。
プレゼン終了後、ブータンからの客人はプレゼンの内容と説明に
深々と感謝した後語ってくれた。
『我々の国ではふつう、各農家が5,6頭の牛を飼っています。
毎日の仕事の一つはこの牛たちの寝床を落ち葉や藁などで
作ることです。牛の寝床は毎日糞やおしっこで汚れますので
替えてえてやらなければなりませんから。
汚れた敷き草は畑近くの一か所に積み上げていきます。
そしてこれらをうまく発酵させて堆肥を作るのです。
ブータンには大規模農業を行うところはまだありませんので
このような原始的な方法で肥料を作っても十分間に合うのです。』
また農薬については
『我々は仏教の教えに基づき殺生をできるだけ避けたいと思っています。
ですので、虫やほかの生きものを殺す農薬は農民が使いたがりません。』
農薬や化学肥料へと走り過ぎて、世界が今、戻って行こうとしているその場所に
彼らはどっしりと腰を据えている、そんな話のように聞こえてならなかった。
ブータンという国が気になるわけ
この前のエントリーで生物資源探索をするものにとって
ブータンがいかに魅力的かの一端を書いてみた。
要約すると『自然環境と伝統的知識が両方いい状態で残っていること』になる。
今回は生物資源探索に関係ない人にとってもブータンは魅力的なはずだ、
ということを書いてみたいと思う。
『密林ジャーナル』の趣旨とはちょっとはずれるがご勘弁を。
多様性の消滅
私の会社の仕事は、世の中の役に立つ物質や機能を生き物から探すことだ。
これを生物資源探索(Bio-Prospecting)と呼んでいる。
今まで見つかっていなかった新種の生物からだけ、新しい物がみつかる、
ということではないが、やはり多様な生物がいる環境というのは
生物資源探索をするものにとって魅力的である。
その一方、この世には伝統的知識というものがある。
これは長い人類の歴史の中で、試行錯誤が繰り返されて現在に至る
主に生き物を利用する知識のことだ。<業界限定。
薬や食品から繊維、そして醗酵食品などバラエティに富んだ
貴重な財産である。
生物資源探索を進める上でこれらの伝統的知識というのは
非常に重要な指針となる。
垂直に多様な国で思う。
まずはこのポスターをご覧いただきたい。
WWFが制作した『ブータンの動物多様性』である。
熱帯・亜熱帯に特有のゾウ、トラ、ワニ、サイといった生き物から
ゴールデンラングール、レッサーパンダ、さらには高山に生息するターキンまで
網羅されている。
海抜200メートルから7500メートルまで垂直方向の多様性は半端ではない。
ご存じネパールも同様の高度差を持ち多様性を誇るが、無節操な観光客誘致と
徹底的な開発により、今やほとんどの生き物が生活の場を失いつつある。
一方ブータンは森林面積は過去30年で増加傾向にあるばかりか、
原生林に関しては基本的に伐採禁止だという。
これまでトシは、開発をする権利はどの途上国にもある、したがって開発を自然破壊だから
やめろという権利は先進国の人間にはない、というスタンスを取って来た。
ある程度の自然破壊や開発はどこの先進国も通過してきたことだし、やむを得ない、と。
しかし、開発をせず、自然保護をしっかり行っていてなおかつ国民が満ち足りている
という国がある(ようだ)。
やっぱりやる気としっかりしたポリシーなのか。
やはり今後のブータンからは目が離せない。
国民総幸福量の国。
クズザンポー!
行ってまいりました国民総幸福量(GNH)の国ブータンへ。
18日出発で24日帰国ながら、現地でのスケジュールがタイトだったのと
宿舎にネット環境がなかったので現地からアップできませんでしたが
昨日の深夜パロ(ブータン)−ダッカ−バンコク−KLというルートで
帰って来たばっかり、ほかほかですのでご勘弁を。
まずはご挨拶がてら、新国王の御真影を前に民族衣装のゴでポーズ。
足首下まである着物を帯上にたくしあげて着るのでおなかのところが
膨らんでおりますが、これは物入れとして使うためのゆとりであって
腹が出ているわけではありません!
似合う!でしょ?(笑)